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【書籍化】魔法が使いたくて肉が食いたくて努力してみたら最強になっていた  作者: 大野半兵衛


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第67話 不作だから税率を下げましょう

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 第67話 不作だから税率を下げましょう

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 皇帝にガラスを献上したことで、俺の職位が九位に栄進えいしんした。

 役職はそのままだが、帝都を離れている貴族が一年で栄進するのは滅多にないことだ。


「皇帝陛下は内侍大尉殿の献身を高く評価されておられる」


 献身なんて高尚なものではない。

 うちのガラス製品が皇室御用達になれたらいいなー、と思ってガラスを献上しただけなのだ。

 皇室御用達になったら、箔がつくんだよ。プレミアってやつだ。それに価格も高値で安定する。(こちらが本命)

 皇室御用達になれたから、九位栄進よりもそっちのほうが嬉しいと思っているわけだ。


「婿殿。大公のことは聞いた。すでにシュバルクアッド家を退けただけでなく、従えたと聞いておる。素晴らしいことだ。ホホホ」

「大公は何を考えているのでしょうか?」

「逆恨みよ。あの者は五十年近く大将軍の地位にしがみついてきたが、自分では何も成せておらぬ。その大公の前に若く才気煥発さいきかんぱつの婿殿が現れた。言い方は悪いが、出自のはっきりしない婿殿がな」

「若いのは分かりますが、才気煥発というのは疑問です。私は大公の前で何かをしたことはありませんが?」

「ホホホ。婿殿らが帝都を発った後、野盗に襲われたであろう?」

「……あっ!? ありましたね、たしか五十人くらいの野盗に襲われました」

「あれは大公の放った刺客よ」

「はい?」

「その刺客を皆殺しにしたことで、大公は家臣を多く失うことになった。その者の一族がその真実を知り、大公は立場を失ったのだ。愚かなことをしたものよのう。ホホホ」


 あの爺さん(大将軍のこと)、頭の中腐ってるな。

 擁護する気にもならんし、それで死んだ家臣たちも浮かばれないな(殺したのはノイスとリットです)。


 舅殿はお土産をもってホクホク顔で帰っていった。

 今回のことで、シュバルクアッド家が軍事行動を起こした背景も分かった。

 アホな理由だが、それで死んだ騎士たちは浮かばれないな(殺したのはノイスたちです)。





 この厳重な警備を行っている場所は、俺の許可がない者では入ることができない。

 毘沙門党でも限られた人しか立ち入りが許されていないし、たとえトルク様でも入ることはできない場所に俺はいる。

 と、大げさに言ったが、それだけ他人に情報が漏れるといけない場所というわけだ。


「ボス。できました」


 差し出された小皿の上には、黒い粉がある。これは黒色火薬というものだ。

 ここでは硝石丘法で硝石を作り、火薬を作っている。

 その原料はヨモギのような植物と人畜の糞尿だ。

 現代日本と違い、この世界の糞尿処理はかなりずさんだ。

 それを集めてここで硝石を作っている。

 人が住む場所が清潔になり、さらに硝石まで作れるのだから一石二鳥だな。


 さて、その糞尿を運ぶのは収納魔法を持つカカロスだ。

 十四歳のカカロスが持つ収納魔法は、俺の無限収納魔法とは違って容量に制限があり、時間経過もある。

 それでもソルバーン領内の糞尿を集めてくるには事足りる。


 硝石丘法で硝石を作るのは、テンダロスになる。

 テンダロスは十五歳でアスパラガスのようにひょろっと背が高いのだが、使える魔法がエグいのだ。

 テンダロスは腐敗魔法を使い、本来なら数年かかる糞尿土を数日で作ってくれる。


 糞尿土に灰を混ぜて硝石を取っているのは、火魔法を使うベグだ。

 ベグも十五歳だが、根気のいる作業を嫌がらずやってくれる。


 最後に硝石と硫黄と木炭を配合しているのが、俺に黒色火薬を手渡してくれたアイビーになる。

 アイビーは十三歳で重量魔法を操る。

 この重量魔法は面白いもので、対象の重さを変えるだけでなく測ることもできるのだ。調合や配合には都合のよい魔法である。


 俺の妻のスライミン姫も重量魔法を使うが、重さを測る精度はアイビーのほうが上だと言える。


 俺は出来上がった黒色火薬を無限収納魔法に入れていく。

 テンダロスの腐敗魔法のおかげで、短時間で硝石が大量に生産できるのはありがたい。


 戦に備えて黒色火薬を作っているが、これを使うような事態にならないことを願うばかりだ。

 黒色火薬は最後の手段であり、使わないならそのほうがいい。

 だが、必要なら俺は容赦なく使うだろう。


 あと、硝石は肥料にも使えるので、用途のメインは肥料だ。(本当だよ)

 すでに今年の作物には、硝石から作った肥料を使っているのだ。





 秋の刈り入れの時期になった。

 今年は不作になっている。

 うちは肥料を使っているので、不作でもまだマシなほうだ。他の地域は凶作と言える状態なのだから。

 この冬は多くの人が飢え死にするかもしれない。

 そこで俺はアルタンさんに頼んで南方で安いところから食料を買い込んでもらうことにした。


「トルク様。今年の麦の徴収は三割にしませんか」

「不作で三割ではさすがに台所(財政)が賄えないのでは?」

「いえ、大丈夫です。石鹸と塩、ガラスから得た税が莫大です。今回はそのお金の使いどころです。ソルバーン家では民を大事にしている、そう周辺に知らしめるのです」

「それはどういった目的なのかな?」

「このジール州はどこも不作だと聞いています。そんな中でも他の家はいつも通りの税を確保しようとするでしょう。つまり、他領の民は大きな不満を持つわけです。ただ、それはいつもと変わらないため、不満を持っても我慢しようとするはずです。そこに、ソルバーン領の民だけ税を下げてもらい、飢えに苦しむことなく冬を越せたとなれば、他の民はどう考えるでしょうか」


 減税すれば、トルク様の評判がうなぎ上りだ。その陰で他の領地から逃げ出してきた人が増えることになるだろう。


 人口の多さは武器だ。

 しばらくは生産力が追いつかないだろうが、そんなものは他所から購入すればいい。お金の使いどころと言えるだろう。

 これは数年後を見据えた施策だが、問題があるとすれば、他の騎士家から敵視されることだろうか。将来への投資と敵視を天秤にかけた時、俺は投資を選んだ。どうせ嫌われているのだから、今さらだと開き直ったともいう。もっとも、ちゃんと対策はするけどね。あとはトルク様がどちらを選ぶかだ。


「周辺の家々が敵になるのは避けたいかな」


 当然の考えだ。


「だけど、ノイスはそれ以上に投資するほうにメリットというものを感じているんだね?」

「はい。俺が考えるのは、ソルバーン家の繁栄です。他の家のことは二の次です。もちろん、敵対勢力が増えるのは、ソルバーン家にとってよくないことです。そこで、困った騎士家に融資をするのです」

「融資?」

「食料を大量に購入し、それを他の家にも与えるのです。それでトルク様の影響力を大きくします。食料だけで足りなければ、古いクロスボウを譲渡しても構いません」


 レンドルがより強力で射程距離の長いクロスボウを作ってくれた。毘沙門党とソルバーン家のクロスボウは、新型に置き換えていく。

 そこで使わなくなったクロスボウを他の家に買ってもらう。もちろん、ローンでOKだ。むしろローンがいい! 麦の貸付とクロスボウの譲渡で借金漬けにしてやろう。


「それは……ノイスは相変わらずえげつないことを考えるね」

「そんなに褒めないでください」

「いや、褒めてはないけど……ゴホンッ。分かった。ノイスの案を採用する。今年は麦の税を三割にする。そう領内に徹底させてくれ」

「はい」


 トルク様には言ってないが、この案には続きがある。

 借金漬けにした家に、毘沙門党員を送り込むのだ。今すぐではないが、いずれ借金で首が回らなくなった家を乗っ取るのだ。これが本当の目的である。

 毘沙門党員の中には、騎士になりたいという子供が多くいる。全員ではないけど少なくはない。

 だが、全員がタタニアのように戦で活躍して騎士になれるわけではない。それに領地や俸給の問題があるため、増やし過ぎるわけにはいかない。

 そこで、今ある騎士家の乗っ取りを考えたというわけだ。

 自分でも悪辣と思うが、信用できないヤツらよりも同じ釜の飯を食った仲間たちを重用するのは当然だ。





 俺はすぐに領内の各村へと向かい、今年の麦の税は三割だと触れて回った。

 実はこの三割という率は、いつもの年(例年通りの時)よりも民の手元に残る麦の量が多いのだ。

 このことを聞いた各村の村長や肝入りたちは、何度も確認してきた。

 シャイフ家がこの地を治めていた時は、不作でも厳しい取り立てがあったのに、ソルバーン家はそうならないどころか、プラスになるのだから当然だろう。


 ソルバーン家が税を三割にしたという噂は、瞬く間にジール州の各地に広がった。

 俺が関わっているシュバルクアッド家の領地では三割に税が下げられたが、その他の領主は凶作でもいつもの量の麦を民からむしり取ろうとした。もちろん、いつものように税(麦)は集まらない。


 ちなみに、シュバルクアッド家には俺が得ている石鹸とガラスの販売益から食料を購入する支援をした。

 トルク様はソルバーン家から支援をすると言ったけど、さすがにシュバルクアッドの領地は広い。ソルバーン家の財政を圧迫するから、俺の資産から出した。

 俺の資産は子供たちの衣食住以外にあまり使わないので、貯まる一方だ。こういう時に使うべきだろう。

 それに、シュバルクアッドはソルバーン家ではなくシュラード家の家臣なのだから、うちが出すのが筋だ。

 麦の買い付けをしてもらっているアルタンさんはニコニコだ。


 さて、シュバルクアッドの当主がシュラード家の紐付きであるヘックになり、騎士たちは大きな不満を持っている。

 それでも今は反乱を起こしてはいないし、大人しく従っている。

 さすがに、出陣した騎士の八割が死亡したと聞き、残っていた騎士たちは戦慄したようだ。

 だが、そういった感情はいつか忘れるものだ。

 だからヘックにつけて送り出した十人が、騎士たちをしっかり見張っている。

 騎士たちはヘックをはじめ、皆が子供だと侮っている。

 反乱まではしてなくても、不満を隠そうともしない莫迦な騎士はいる。そういうヤツから情報は抜き放題だ。

 ヘックに忠誠を誓わない者は時期がきたら粛清する。

 今は好きにさせておくさ。



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― 新着の感想 ―
 実はこの三割という率は、いつもの年(例年通りの時)よりも民の手元に残る麦の量が多いのだ。    が、ちょっと分かり難かったので……  実はこの 不作で三割という率は、平年並み作でいつもの税率の時よ…
どんどん地盤が固まりますね
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