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第56話 奥さん、魔獣より恐ろしいものがあるそうですよ

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 第56話 奥さん、魔獣より恐ろしいものがあるそうですよ

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 これは秋のことだが、神官がやってきて子供たちの魔法を鑑定していった。その際にコンタの魔法も鑑定してもらった。

 コンタは毘沙門党員ではない。だから魔力増量については教えていない。こればかりは俺でも掟を守る。


「この子の魔法は契約魔法です。魔力は極めて少ないですな」


 契約魔法だとっ!?

 そうか、コンタは契約魔法を使うのか。

 俺はコンタを毘沙門党に誘った。

 コンタは俺になついていて、俺のいいようにすると言ってくれた。


「それなら、この毘沙門天の像に毎日魔力を捧げるんだ」

「ワカッタ」


 その日から、コンタは毎日毎日必死に毘沙門天に魔力を捧げた。





 この数日雪が降らず、比較的暖かい。

 といっても、気温はマイナスだと思われる。

 太陽が出ているから暖かいようだ。

 そんなある日のことだ、城からシュラード家に登城するようにと使者がやってきた。

 登城したのは、俺、養父、クラウド・ライデム、ゴドラン・バランライト、テアス・ガルドといった城下に住む騎士全員だった。


「トイク村のそばに魔獣が現れた」


 トルク様の発言で、場が一気に凍りついた。


「トイク村は大丈夫でしょうか?」

「まだ大丈夫だが、いつ襲われても不思議ではない」


 クラウドさんの質問に、トルク様は頷いてから答えた。


 魔獣か……。

 魔法を使う獣というのは知っているが、いったいどんな容姿をしているのだろうか。


「ちょっとお聞きしたいのですが、その魔獣はどのような姿をしていましたか?」


 トイク村から駆けつけた村人に確認してみる。


「え?」

「いや、魔獣と判断したということは、それが魔獣だと知っていたんですよね。で、その魔獣の姿はどうだったのか聞きたいわけです」

「あ、はい。現れた魔獣はキツネなのですが、普通のキツネより大きく、たった一撃でクマを倒すくらい強かったです」

「そういったクマを一撃で倒せるようなものがいるとしたら、それはノイスか魔獣くらいだと判断したわけだ」

「え、俺か魔獣かは酷くないですか、トルク様」

「むしろ、ノイスの自覚がないことに驚きだよ」


 なんでやねん!


「しかし、クマを一撃か」

「はい。少し離れたところからキツネが腕を振ったら、クマが真っ二つになりました」

「恐らく風の魔法であろうな。魔獣は風系、水系、土系の魔法を覚えることが多いと書物に書いてあったと記憶しておる」


 養父がその知識から魔獣の属性を風だとほぼ断定した。

 俺は手を挙げた。


「トイク村には俺がいきます」


 こんな機会は滅多にない。

 魔獣とやらを見てみたいじゃないか。


「ノイスがか……魔獣はかなり危険だと聞いているが、勝機はあるかい?」

「魔獣というものを見てみたいという好奇心からですから、勝てるかは分かりません」


 正直なところ、まだ遭ってもないのに勝てるなんて断言できないよね。


「興味本位か、ノイスらしいな。分かった。魔獣の件はノイスに一任する」

「それなら某がノイス君についていきましょう」


 テアス・ガルドさんだ。この人とはあまり接点がないから、なんでここでと思わないではない。


「テアス殿か。分かった。では、ノイスとテアス殿をトイク村へ送ることにする。すぐに準備して向かうように」


 すぐに屋敷に戻り、同行する毘沙門党のメンバーを選ぶ。


 ラントール城下にいる毘沙門党のメンバーをまとめているエルグ。


 指揮官としてその才能が開花しつつあるグルダ。


 生命魔法の使い手のバルナン。


 矢に風を纏わせて威力と命中精度を上げているリット。


 地魔法に磨きをかけたレンドル。


 フェース刀術を学んで更なる飛躍を遂げたシュー。


 炎魔法の使い手であるジラルディン。

 ジラルディンはトルク様がラントール城の城主になった際に集めた子供の一人だ。


 そして我が妻の二人と、今回はマルダも連れていく。そろそろ現場を見せるのもいいだろう。


 今、ラントール城下にいるメンバーで、各方面の優秀なメンバーを選んだ。


「クママは残った子供たちの面倒を見てやってくれ」

「うん。こっちのことは任せておいて。ボスたちなら大丈夫だと思うけど、気をつけてね」


 クママは性格的に戦闘は得意ではないので、留守番して他のメンバーの面倒を見てもらう。


「ララ。何かあったら連絡をくれ」

「うん」


 防寒具を着こみ、食料などの補給物資を荷車に積み込んでいく。

 幸い、水は現地調達ができる。

 何せ今は雪が腐るほどある(腐りません)し、この辺りは川も多い。

 水には困らない土地だ。


「ボス、ガルド様がきたよ」


 毘沙門党のメンバーの一人がテアス・ガルドさんの来訪を告げた。


「おう。皆、いくぞ」

「「「応!」」」

「「「はい!」」」


 テアス・ガルドさんは従者一人を連れてきただけだった。


「有象無象が多くいても、魔獣戦では邪魔になるだけだからな」


 その意見には賛成だ。

 もしかしたら誰かを守って戦うだけの余裕がないかもしれない。

 だから、最低でも自分の身は自分で守れる人しか連れていけない。


「ガルド様は魔獣と戦ったことがあるのですか?」

「いや、戦ったことはない。だが、私が幼い頃、父が魔獣と死闘を繰り広げたのを見ていた。かれこれ二十五年も前のことだ」


 ガルドさんは三十四歳だから、九歳の時の話か。


「魔獣は強いですか?」

「ああ、強いな。だが、ノイス君がいれば、問題ないさ」


 その信頼はどこからくるのだろうか?


「以前魔獣を見た私は幼かったが、魔獣の恐ろしさは肌で感じたものだ。あの時は泣くことしかできなかったがな。ハハハ」


 冗談なのか? 笑っていいのか迷う。


「だがな、私はあの時の魔獣よりも恐ろしい存在を知っている」

「そうなんですか? 魔獣より恐ろしいというと……何者?」


 魔獣を知らないから、どれほど恐ろしいか分からないんだよな。


「ハハハ。君たちだよ」

「ん?」

「このメンバーの誰一人として、私は勝てそうにない。特にノイス君とその弟のマルダ君。君たち二人は別格だ。そばにいるだけで、肌が粟立つほどにね」

「………」


 マルダは「ほえ?」と、何を言われているか分かっていない。

 俺が感じたり見たりできるように、ガルドさんは他人の魔力量を肌で感じることができるようだな。


「俺、怖くないですよ?」

「「「嘘だーっ!」」」

「おい、お前たち!?」


 なんで毘沙門党のメンバーがツッコミを入れるんだよ!?


「ハハハ。随分と仲がいいことだ」


 ガルドさんとも打ち解けたようだ。さて、魔獣見物にいきますか!



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