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第50話 ノイス、一対三のお見合いをする

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 第50話 ノイス、一対三のお見合いをする

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 謁見の二日後、俺の前には複数の少女が座っている。


「こちらからアーフェン家のルリー姫、ツクード家のライン姫、フェース家のスライミン姫だ」


 養父に紹介された少女たちは、俺の嫁候補である。

 事前に嫁候補を探すと養父が仰ったのだが、俺にはクラリッサという婚約者―――幼馴染であって婚約者ではない―――がいる。


「クラリッサは側室にすればよい。ノイスの正室は儂が選んだ姫の中から選ぶがいい」

「しかし……」

「これはノイスの子のことを考えた縁談である」

「俺の子、のことを?」

「子の魔力量は母から引き継ぐ。そう言われておるのだ。そして父の魔法属性を母が補完することで、子の魔法属性はよりよいものになる」

「そ、そうなんですか?」

「貴族というものは、そういった子作りを積み重ねてきた者たちなのだ」


 魔法の継承に関しては最も長い歴史を持っているのが貴族だ。

 養父の仰っていることは理解できる。

 だが、俺は光源氏計画を発動させている最中である。

 クラリッサは胸も徐々に膨らんできて、少しずつ女の子から女性へと育ってきている。


「クラリッサもその程度のことは分かってくれよう。それに今回集める姫たちは、ノイスの身体強化魔法を補完する属性の持ち主たちだ」


 子供にはいい魔法属性を持たせてあげたいが、そのためだけに女性を選ぶのは気が進まない。


「これは貴族としての責務と思うことだ」


 そんなことを言う養父は亡き正室一人しか妻を持たなかったくせに……。


「儂に子がないことを不思議に思っておるのか?」


 顔に出ていたようだ。


「どうも儂の種にも問題があるようで、正妻にも側室にも子はできなかった」

「え、側室がいたのですか?」

「フフフ。これでも三人ほど側室を持ったわ」

「それは知りませんでした」

「儂に子種がないことで妻たちに辛い思いをさせたが、儂は妻たちを平等に愛しておった。正室と側室という差はあるにしても、それ以外は平等である。ノイスもそうすればよいのだ」

「……分かりました」

「うむ。今回選んだ姫たち全てを妻にしてもよいぞ。子供はたくさんのほうが楽しいからの。ハハハ」


 いや、そこまでは……。

 そんなわけで、三姫を紹介されたわけだ。


 ルリー姫(九歳)は頼衆家らいしゅうけの家格であるアーフェン家の姫で、艶やかな濃い緑色の髪とエメラルドグリーンの瞳の可愛い系少女だ。


 ライン姫(十歳)も頼衆家の家格のツクード家の姫で、青紫色の髪と切れ長の目はサファイアブルーの中性系少女だ。


 スライミン姫(十一歳)は名家めいかの家格のフェース家の姫で、ピンクゴールドの髪と金色の瞳の綺麗系少女だ。


 三人とも容姿に文句はない。

 むしろ、三人とも将来は美しく育つであろうと、思える容姿だ。


「どの家もシュラード家の分家筋で、できるだけ魔力の多い子を揃えた」


 つまり、この三人の誰もがシュラード家の血を引いているわけだ。

 養父もなかなか強かだね。

 三人から生まれた子を跡取りにすれば、どう転んでも俺の後はシュラード家の血を引く当主になるわけだ。

 ただでは転ばない、そんな思惑が見えるよ。


「皆さん、こんにちは。私はノイスといいます。すでにご存じとは思いますが、私の出自は平民です。鍛冶師の三男に生まれました。そんな私の妻になるかもしれませんが、皆さんはそれでよろしいですか?」


 三人は表情を変えない。

 俺が平民だというのは、聞いているということだろう。


「そのことは聞き及んでおります。それを承知でわたくしはここにいます」

「わたくしもノイス様の出自について聞いております。ですが、内侍司様が選ばれたお方と聞き、問題ないと判断させていただきました」


 ルリー姫とライン姫は理解した上でここにいると言う。


「わたくしはまだノイス様の妻になることを了承したわけではありません。父にどうしてもと薦められ、この場にきております」

「つまり、私を見て判断すると?」

「そのつもりです」


 スライミン姫は他の二人と少し違うようで、自分の目で俺を見て夫に相応しいか判断すると言う。

 ならば、しっかり見極めてもらうじゃないか。


「皆さんは肉はすきですか?」

「「「肉……ですか?」」」


 突飛もない話題に、三人は些か面食らったようだ。


「私は狩りをするのですが、野鳥の肉やイノシシの肉が好きです」

「わたくしは嫌いではないです」

「わたくしも嫌いではないですわ」

「わたくしも狩りをしますが、シカの肉が脂が少なく好きです」


 ルリー姫とライン姫は無難な回答で、スライミン姫だけは踏み込んだ話をしてくれた。


「私は平民の子供たちを集め、面倒を見ています。そのため、屋敷は子供たちの声で騒々しいのですが、皆さんはそういった屋敷をどう思いますか?」

「静かなことに越したことはありませんが、子供は嫌いではありません」

「子供が騒がしいのは仕方がありませんわ」

「わたくしは上から二番目の子で弟妹の面倒を見ていたことから、子供の扱いには自信があります」


 三人の回答には差があるが、子供は嫌いとは言わない。


「わたくしからも質問をよろしいですか」

「構いませんよ、スライミン姫」

「ノイス様はすでに初陣を飾っているとお聞きしました。人を殺すことをどう思っておられますか?」


 他の二人が驚いた顔をしている。

 こんな質問をして、俺が気を害すのではないかと思ったのかな。


「難しい質問ですね……。戦がある以上、相手を殺さないと私が殺される。私は死にたくないので、相手を殺します。殺したいからではなく、自分が死にたくないから戦うのです。そして、私が戦うことで守りたいと思う人たちや、守るべき人たちを守れるなら、私は殺戮を厭いません」


 我が儘かもしれないが、戦う時には徹底的に戦うつもりだ。

 その時は敵を無慈悲に踏みにじることも厭わない。


「覚悟を持っておられるのですね」

「覚悟……そうですね、それが俺の覚悟なんだと思います」


 それからもお互いに質問を繰り返した。

 見合いの場なので、しっかり相手のことを知らないと話にならない。


 姫たちが帰っていかれた後、養父にどうだったかと聞かれた。


「三人ともよい方だと思います」

「ならば三人をもらいうけるか?」

「いえ、さすがにそれは」

「ならば誰にするのか?」

「……スライミン姫をと思っています」

「なぜスライミン姫か、理由を聞いてもいいかな」

「俺の質問をさらっと受け流すのではなく、しっかり受け止めてくださった感じがしました」

「うむ。ならば、フェース家に縁組を申し込むとする」



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― 新着の感想 ―
ある意味ノイス以上にタタニアの身の振り方考えた方がいいかと。
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