第48話 貴族の魔力は多いのに騎士に領地を横領されるのが不思議だ
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第48話 貴族の魔力は多いのに騎士に領地を横領されるのが不思議だ
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晩夏の海も悪くないものだ。
強い日差しを海風が和らげてくれる。
八日の航海を経て俺はカサワ港に上陸した。
海賊に出会うことはなかったが、道案内をするという名目で海銭という通行料を取る者たちは多くいた。
もし海銭を払わなかったら、その者たちが海賊に早変わりするらしい。
だから海銭を払うのが一般的だし、その海域に通じているので座礁することなく安全に通行できる。
そういった者たちを、海人《 あまうど》というらしい。
帝都の玄関口というだけあって、カサワ港の賑わいは目を見張るものがある。
しかも、異国の船も寄港していることもあり、なんと獣人までいるではないか!?
書物では獣人がいることは知っていたが、実際に見ると胸が躍る。
俺が石鹸やガラス製品を作れるのは、前世のライトノベルの知識のおかげだ。
ライトノベルといえば、獣人やエルフ、ドワーフといった種族が出てくる。
このシュリンダール帝国はヒューマンと言われる俺のような人種の国だが、大陸には獣人やエルフ、ドワーフといった種族の国があると聞く。
この世界にもそれらの人がいるというのだから、興奮しないわけがない。
「ノイスは獣人を見るのは初めてか」
「はい。書物では知っていましたが、実際に見るのは初めてです」
「うむ。このカサワ港には大陸からの船も多く寄港しておる。獣人だけでなく、運がよければ他の種族も見られるであろう」
獣人を差別することなく、商売が行われているようだ。
実に活気のある港である。
カサワ港のアルタンさんの店で二泊し、航海の疲れを癒したのち、俺たちは帝都へ向けて発った。
ここから陸路で二日進むと帝都に入る。
アルタンさんの商隊と共に進み、予定通り二日で帝都に入った。
アルタンさんは知り合いの商人のところで世話になるため、帝都の中でも北都と言われる地区に向かった。
帝都に住む人々は、帝城があるエリアを内都、北側の貴族が住むエリアを北都、南側の庶民が暮らすエリアを南都、西側の市場や商店が立ち並ぶエリアを西都、東側の騎士家が多く立ち並ぶエリアを東都と呼んでいるそうだ。
北都にはシュラード家の屋敷があるのだが、その屋敷は朽ち果てており、敷地内は荒れ放題になっている。
そのため、知り合いの貴族の屋敷へと向かっている。
カサワ港に入った日に、従者のサルダーンを先行させて先触れを行っている。
帝都に入る前にそのサルダーンと合流している。
シュラード家の屋敷は荒れ果てていると聞いたが、この北都自体が荒れ果てているように見える。
「帝都は長き戦乱によって荒れ果てている。復興させては焼かれ、焼かれては復興させていたが、帝室や貴族家の領地が横領されていくにつれ、復興もままならなくなり、このように荒れ果ててしまったのだ」
養父の顔は悔しさでいっぱいだ。
高位の貴族であっても、地方へ赴いて領地を守るしかなかった。
シュラード家の当主として、今の北都の有様に忸怩たる思いなのだろう。
俺たちが入った屋敷は、シュラード家の分家の一つで頼衆家のアフィス家だ。
当主ルト・アフィス(二十八歳)は九位・蔵見大尉で、帝室の宝物を管理する蔵見の役を代々受け継いでいるらしい。
その父のラルグ・アフィス(五十二歳)は二年前に当主の座をルトに譲っているが、いまでも八位・蔵見司をしている。
アフィス家の屋敷も御多分に漏れず荒れているが、雨漏りしないだけマシだ。
「ラルグ殿、ルト殿。しばらく世話になるが、よろしく頼む」
「久しいですな。三年ぶりですかな」
前当主のラルグ様は苦労人といった風貌の方だが、息子で現当主のルト殿はかなりのイケメンだ。
この翌日から貴族巡りが始まった。
覚えたての礼儀作法を駆使しているが、ただの張りぼてなのはすぐに見破られていることだろう。
だが、貴族たちに進物をした甲斐があり、俺は十位・内侍大尉に任官した。
そして、当初の目的であるロベルトにも役職が与えられ、十四位・兵馬少尉に任官が許された。
兵馬寮は軍馬を管理する役所になるが、もちろん形骸化している。
「さて、ノイスも任官されたことだし、登城するかの」
なんですと?
「皇帝陛下へにお礼を申しあげねばならぬであろう」
マジっすか。聞いてないのですが?
「ハハハ。我がシュラード家を継ぐ者として、しっかりご挨拶せねばならぬて」
「俺では皇帝陛下に失礼をしそうなんですが」
「これまで上手くやっておる。その調子なら問題あるまい。何、儂が共におるのだ、下手なことにはならぬわ」
そんなわけで帝城へ登城する日になった。
これまでの数日で分かったが、貴族はやはり魔力が多い傾向にある。
養父並みの魔力量の人がかなり多くいた。
それほど魔力の多い貴族なのに、なんで騎士にとって代わられてしまったのか?
それは……。
「貴族は争いを好まぬ。よく言えば文化人、悪く言えば腰抜けなのよ」
これまで貴族と接してきたが、養父の言葉に納得するものがある。
貴族には威厳というものを感じることはあっても、背筋が凍るような殺気というものを感じないのだ。
「貴族の家には継承すべき家職がある。歌に楽、書や国学などじゃな。そして騎士にも継承するべき家職を持つ家がある。弓馬に刀術、槍術、軍学などじゃな」
「シュラード家にも家職があるのですか?」
「ある」
「どんな家職なのですか?」
「ホホホ。ノイスはすでに知っておろう」
既に俺が知っている? そんな話は……もしかして、あれか!?
「二つめの魔法ですか?」
「左様。当家の家職は多重魔法である」
「貴族なので歌か何かかと思っておりました」
「ホホホ。それはこれから教えることだが、簡単に言えば当家の血筋には多くの騎士家がいるのじゃ。我が家は貴族では珍しい武門の家系よ」
「そうなのですね。知りませんでした」
「まだまだ学ぶことは多いぞ、ノイス」
「努力します」




