第40話 溜まっていたんだな……
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第40話 溜まっていたんだな……
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引き渡しを打診していたゴドランさんと合流したが、引き渡しを拒否されたらしい。
子供たちを引き連れて現れたゴドランさんをかなり侮られたらしい。
「なるほど、そういった理由があったのか」
「そんなわけで、デルダン・シュイフはぶっ飛ばすしかないようです」
どうでもいいが、シュイフという家は、シャイフ家の分家らしい。紛らわしいよね。
「ぶっ飛ばすはいいが、どうするんだ?」
「明日、もう一度引き渡しを要求しましょう。その際に騎士シュラード様とライデム様に立ち合いをお願いしましょう」
カイン・シュラードは、うちの村によくきていたくたびれた感じの騎士だ。
巨馬のゴルゴーの主人と言えば思い出してくれるだろうか。
以前の俺は知らなかったのだが、カイン・シュラードと言えばシャイフ家でも重鎮なんだとか。
しかもつい最近までラントール城の城代をしていたのに、いきなりデルダン・シュイフがやってきて城代を罷免されたらしい。
「シュラード殿とライデム殿か。あの方々であれば、信用できる。そうするとしよう」
ゴドランさんはすぐにカイン・シュラードの屋敷へ向かった。
俺もライデム家の屋敷へ向かう。
二人のシャイフ家の騎士に立ち会ってもらえば、あとはなんとでもなる。
ギース・シャイフはロベルト・ダルバーヌから直接引き渡しを命じられ、「うん」と言ったのだ。
それを今さら反故にするとなれば、ダルバーヌ家に喧嘩を売ったことになる。
このままだとシャイフ家が滅びるかもしれない。
カイン・シュラードもライデム親子も協力は惜しまないと言ってくれた。
翌日、シュラード様とライデム親子と共にラントール城に向かったが、なんとデルダン・シュイフは兵を集め、矢を射かけてきた。
「なんと愚かな……」
「これではシャイフ家を滅ぼすことになりかねない。愚かな」
カイン・シュラードはあまりの莫迦さ加減に呆れているし、ライデム(親)も首を横に振っている。
「シュラード殿、ライデム殿。こうなっては戦となることも仕方がない。貴殿らはどうされる?」
「……某はギース様が城の引き渡しを受け入れた場にいた。シュイフもいたにも関わらず、約束を反故にする行動をとった以上、謀反と言えます。謀反は鎮圧しなければなりません」
「そうですか。ならば、我らは我らの仕事をさせていただく」
「まさかこれだけの戦力で城を攻めるのか?」
「戦力は十分、むしろ過剰と言えましょう」
何を言っているんだ、という目でゴドランさんを見る二人の騎士。
「バランライト殿、少しだけ時間をもらえるだろうか。城兵に投降するように説得を試みてみたいのだ」
「いいでしょう。一刻だけ待ちます、ライデム殿」
「すまない」
「某も説得しよう」
シュラード、ライデム両騎士が説得を試みることになった。
あと、バランライトというのは、ゴドランさんの家名になる。
ゴドラン・バランライトが騎士になったゴドランさんのフルネームだ。
さらにいうと、タタニアの家名はイーフェンである。
シュラード、ライデム両騎士の説得は失敗に終わった。
城を守っている兵はシュイフの子飼いの兵士たちがほとんどのようだ。
その代わり、数はそこまで多くない。
城内の気配の数はおよそ四十といったところだ。
正直いって制圧はそこまで難しいとは思わない。
「ノイス。シュイフは捕縛で頼む」
「善処しますが、場合によっては殺しますよ、ゴドランさん」
「ああ、それでいい」
城内に魔力量の多い人はいない。
シュイフも平民並みの魔力量だ。おかげで判別がしにくい。
魔力量イコール強さではないが、圧倒できると思う。ただし、こちらの命が優先だ。危ないと思ったら、殺すことに躊躇はしない。
「それじゃあ、やりますか。ホッタン、城門を破壊しろ。俺とクママはホッタンを弓で援護、エグルとライダンとレンドルは城門が開いたら突入。城兵は殺さず生け捕りにするが、自分の命が最優先だ。殺しても問題にならないから安心しろ」
「任せておけって!」
「「「分かりました」」」
ホッタンが城門へと駆け出す。
城兵で弓を構えたのは五人ほどだ。
その弓兵を俺とクママが射る。
「ぎゃーっ」
「がっ」
クママは身体強化魔法の使い手だが、性格的に接近戦は得意ではない。
だから、クロスボウを使っていたが、最近は強弓ジュニアを使っている。
だが、強弓と強弓ジュニアでは兵を殺してしまうので、今の俺たちは普通の弓を使っている。
俺とクママで城壁に姿を現した弓兵を射て、五人を無力化した。
俺もクママも百発百中の腕前だ。こういう時に日頃の訓練がものを言うんだよ。
ホッタンが城門に近づくと、今度は石を投げつけてくる。
それは重装備(全身金属鎧)のホッタンが盾で防ぐが、足は止まらない。
「おらーっ!」
城門にホッタンの槌が叩きつけられる。
金属の門が大きくへしゃけた。
「もういっちょ!」
もう一発叩き込むと、扉が派手に吹き飛んだ。
「よし、突入!」
エグル、ライダン、レンドルがホッタンに続いて門の中へ突っ込んだ。
「ヒャッハー!」
「ギャハハハッ!」
「ぶち殺すぞっ!」
「腕の二、三本は置いていけ!」
毘沙門党のメンバーが悪役っぽい……。
俺は殺すなよと言ったよね?
意識して殺してないだろうな?
「留守番だったから、かなり鬱憤が溜まっているようで……」
クママが苦笑しながら教えてくれた。
「まったくあいつらは……」
あいつらの性格を甘く見ていた俺の見込みの甘さかよ。