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第39話 どうやらもう一戦あるようだ。付き合わされる兵が可哀想だよな

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 第39話 どうやらもう一戦あるようだ。付き合わされる兵が可哀想だよな

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 俺が狙撃した人はやっぱりヒンドルだったようだ。

 あと、詭道のグラードンも右手を失っている。

 生命魔法の使い手に治療してもらったようだが、右腕はくっつかなかったようだ。矢が命中した部分が派手に肉片を飛び散らかしたので、くっつけるのはほぼ不可能だろう。

 うちのバルナンなら、あるいは再生が可能かもしれないが。


 ヒンドル陣営の騎士の行動は二つに分かれた。

 素直にロベルトに降る騎士と、徹底抗戦だと声高に言い張る騎士だ。

 ただ、旗頭がいなくなったことで、ロベルトに降る騎士が多いようだ。


「皆の者、抵抗を続ける者を討伐する。今回許した者らは、しっかりと手柄を立てよ!」

「「「はっ!」」」


 ロベルトは降伏しなかった騎士を攻める命令を下した。

 抵抗勢力はグスタフ・ガーバルドのアストン城に籠っている。

 グスタフ・ガーバルドはヒンドルの外祖父であり、討死した当主の正室の父親であり、さらに家臣筆頭である。

 その勢力は莫迦にできないが、すでに大勢は決していた。

 アストン城は三日で落城し、ガーバルド家の一族はことごとく殺され根切り(族滅)にされた。


 そして、ダルバーヌ家を統一したロベルトは、ダルバーヌ家の当主の座に就いたことを宣言した。


 前当主の正室は殺されなかったが、神殿に押し込められることになった。

 すでに息子のヒンドルも父のグスタフも一族も死に絶えているため、頼る人はいない。

 神殿についていったのも二人の侍女だけだった。

 寂しいことだが、権力争いに負けたらこうなるのだというのがよく分かったよ。


 ロベルトは当家にラントール城を与えると約束している。

 しかも、猛将剛雷のゲキハを捕縛する手柄を立てた。

 ロベルトが約束を守るためには、降伏したシャイフ家からラントール城を召し上げる必要がある。

 一応、シャイフ家が降伏した際にラントール城を召し上げると明言しているそうだが、さてどうなることか。


 夏も盛りを迎え、ダルバーヌ家の本拠地であるジャバス城に皆が集まった。

 もちろん俺は論功行賞の場に立ち会うことはできない。

 トルク様は俺が何をしたか知っているが、それは秘密にした。知っているのはうちの身内たちだけだ。口は堅い。

 ヒンドルを狙撃したのが俺だとバレると、うちを恨むヤツが増えてしまうからね。


 ただでさえ剛雷のゲキハを捕縛して敵の夜襲を防いでいるし、タタニアが夜襲で多くの敵兵を薙ぎ払っており、結果として兵糧を焼くこともできた。

 兵糧は俺が焼いたんだけど、これも当然ながら隠す。

 まだ俺が表舞台に出るのは早い。毘沙門党がもう少し力をつけるまで、俺の名は出さないようにと頼んでいる。

 ただし、俺が世に出るのは、そう遠くないだろう。

 そこからは家族や親しい人たちのために、思う存分力を使うつもりでいる。

 そして戦争を起こすクソッたれなヤツらに、思い知らせてやろうと思う。


 タタニアだが、剛雷のゲキハを捕縛したため、論功行賞の場に呼ばれている。

 騎士に叙されるかもしれないな。





 俺たちはソルバーン村に帰ってきた。

 一人も欠けることなく、皆が元気に帰ってこられたことが一番嬉しい。


 今回の論功行賞だが、トルク様は約束通りラントール城を拝領した。

 ただし、城を取り上げられたシャイフ家当主はかなり不満のようだ。もしかしたら城の引き渡しを巡ってひと悶着あるかもしれない。


 次に塩の権利だが、うちが作った塩に限り販売が認められた。

 うちが作った塩だけは自由に売れるので、大量生産してやろうと思う。


 さらにタタニアは騎士に叙された。

 これは予想通りだったが、なぜか剛雷のゲキハがついてきた。

 なんでも剛雷のゲキハはロベルト・ダルバーヌに仕えることを拒否し、自分に勝ったタタニアになら仕えると言い出したのだ。


 ロベルトは剛雷のゲキハを配下にしたかったようで必死に説得を試みたようだが、残念ながら剛雷のゲキハは最後まで首を縦に振らなかった。


 まあ、いいか。剛雷というのだから、雷が使えるはずだ。それを有効に使ってやろう。

 何に使うかは、これから考えるよ。


 あと兵士長のゴドランさんも騎士に叙された。

 トルク様がラントール城を拝領するのに、配下の騎士がタタニアしかいないのはさすがに少ない。

 だから、ゴドランさんも正門防衛の功績があるとして騎士に叙されたらしい。

 大人の事情というやつだね。


 言っておくけど、ゴドランさんの能力は決して低いわけではない。今回の戦いをそばで見ていたから分かるけど、指揮官としては優秀だと思う。

 魔力が少ないので戦闘で魔法を使うことはないだろうが、指揮官なら魔法がなくても問題はない。


 最後に、トルク様は金貨三十枚、タタニアは金貨五枚、ゴドランさんは金貨二枚をもらった。


 無事に皆が帰ってきた祝いの宴会が開かれた。

 俺は酒に目もくれず、肉を食いまくった。

 トルク様は皆から酒を勧められ、早々に潰されていた。


「おい、ボス。次は俺も連れていってくれよ」

「ああ、モグモグ、次は、モグモグ、連れて、モグモグモグ、いくよ、モグモグモグ」

「やったぜ! 約束したからな!」


 俺ならトルク様がいない間に、この村を襲うくらいの嫌がらせはする。

 だから、ホッタンの第三部隊を残しておいたが、そういうことはなかった。

 次はしっかりホッタンも暴れさせてやろう。

 いざという時のために力をつけてきた。魔力を増やし武術を学んだのだ、手に入れた力がどういったものか、使って確かめたいんだろう。脳筋の考えることは、分かっているさ。俺も昔はそうだった。今は知能派と言ってくれ。





 ラントール城の引き渡し期限が迫っている。

 そこで兵士長ゴドランさんが、俺とホッタンの第三部隊と共にラントール城下に入った。

 そこで俺だけこっそりライデム様の屋敷を訪ねた。

 ニュマリン姉さんの婚約者の家だね。


「先の戦いでは出陣を控えてくださり、ありがとうございました」


 つまらないものですがと、金貨の詰まった袋を差し出す。こういうのは、ちゃんとしておかないとね。


「いや、君のおかげで当家は被害なく済んだ。感謝しているよ」


 ニコニコ笑顔で袋を手前に引き寄せる当主のサムラート・ライデムさん。


 ドルドの夜襲部隊を迎え撃ったヒンドル陣営の中に、シャイフ勢もいた。その際に多くの騎士が死ぬことになった。

 はい、やったのは俺です。

 以前村にきて威張っていた騎士がいたので、ヘッドショットしておきましたよ。

 その際に、周囲にいた騎士っぽいヤツらも殺っておいた。

 いざという時のために、恨みを受けないように立ち回りたいものだよ。本当に。


 シャイフ家の人たちはドルドの夜襲部隊に殺されたと思っているようだが、実は俺なんです。

 タタニアはあの通り派手に暴れたから、シャイフ勢は近づくこともできずにいた。腰が引けていたんだな。なのに死んだのだから、あの世で「お前か!?」と叫んでいるかもしれない。

 あいつらがいったのは、あの世ではなく地獄かもしれないが。


「当主のギース様が城の明け渡しに難色を示しておられるようだ」

「そうなのですか? そのギース様は今はラントール城にいらっしゃるのでしょうか?」

「いや、今はヘルグラット城におられる」

「ラントール城は誰が引き渡しの責任者なのでしょうか?」

「デルダン・シュイフ殿だ。シュイフ殿はギース様の最側近で、ラントール城の城代の座を狙っていた人物だ」

「城代の座を狙っていたのに、その城がなくなる。だから若き当主を唆して引き渡ししない判断になった。そういうことですかね?」

「ノイスの言う通りだ。君は本当に九歳かね?」

「はい。正真正銘の九歳です」


 中身はオッサン、容姿は子供、はたしてその正体は!? ですけどね。



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