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第20話 目を合わせたらヤンキーに絡まれるんだぞ

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 第20話 目を合わせたらヤンキーに絡まれるんだぞ

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 七歳の秋になると、毘沙門党の面々の魔力もかなり増えてきた。

 全員が真面目に魔力を使い果たしているようでよかった。


 そんな秋なのだが、今年は戦があるということで、この村から八十人の男衆が徴兵された。

 今回もトルクさんが男衆を率いる。

 その中にはうちの長兄のモルダンの姿もあった。


 今回の戦は、何やら大きなことが起きる予感がする。

 なんとなくだが、そんな気がするんだ。

 トルクさんたちには無事に帰ってきてほしい。


 今の毘沙門党に、力はない。

 もどかしいが、見ているだけしかできない。


「てや!」

「うりゃ!」

「はっ!」


 今は力をつける時期だ。

 手の届かないところのことを嘆いていても状況は好転しない。

 毘沙門党の皆には武器の訓練をしてもらっている。


 この世界には派手な魔法がない。

 つまり、魔法だけで戦えるものではないというのが、この世界の常識になっている。

 だから武器の扱いが必要になり、訓練をしている。


 だが、全員に刀の才能があるわけではない。槍の才能や弓の才能も同じだ。

 毘沙門党の中で、誰にどんな武器の才能があるのか、この数カ月で大体分かってきた。


 農家の三女タタニア(十三歳)は身体強化魔法を使い、武器は刀も得意だが槍に高い才能を感じる。

 おそらく戦闘力は毘沙門党の中でも随一と思われる。


 タタニアの弟で農家の六男グルダ(十一歳)は光魔法を使い、武器は刀を使う。

 グルダは姉のタタニアの陰に隠れてしまうが、頭の回転が速く機転が利くので、指揮官として将来有望だと思っている。


 農家の三男エルグ(十二歳)は闇魔法を使い、武器は双短剣を使う。

 動きが速く、器用に二本の短剣を使う。


 農家の三男ホッタン(九歳)は身体強化魔法を使い、武器は槌を使う。

 まだ十歳になってないが、パワーのある動きをしている。


 農家の次男ライダン(十一歳)は植物魔法を使い、槍を無難に使う。

 ライダンの槍は中の上といったところだが、植物魔法を使って動きを阻害する嫌な戦い方をする。

 魔法と武器を上手く組み合せているのがいい。


 ライダンの弟で農家の三男クママ(八歳)は身体強化魔法を使い、弓を使う。

 あまり接近戦は得意ではないが、これは性格的なもので身体強化が下手なわけではない。


 クラリッサの兄で商人の四男リット(八歳)は風魔法を使い、弓が得意だ。

 風を纏わせた矢の威力は目を見張るものがある。


 あと、農家の次男ロッガ(十一歳)と大工の四男レンドル(八歳)、そして農家の三男バルナン(九歳)の三人には、武器の才能はないかな。

 だから槍を使わせている。槍ならリーチが長く、振り下ろすだけでもダメージを与えられるからね。

 でも、三人にはそれぞれ貴重な才能があった。


 生命魔法を使うバルナンは、怪我や病を癒す力がある。

 魔力量が多いと、それだけ大怪我や大病を癒すこともできるようになる。

 このまま順調に魔力量を増やしてほしいものだ。


 鳥魔法を使うロッガは、鳥を操ることができる。

 鳥のような空を飛べる生き物を操るということは、索敵でかなりプラスになる。

 魔力が多ければ、それだけ遠くを索敵ができるし、操る鳥の数も増やせるのでこちらも魔力量を増やすことを重視したい。


 地魔法を使うレンドルは、大地を操ることができる。

 たとえば、地割れを起こしたり、畑を耕すことにも使える。

 これは城や砦、防衛陣地の堀を掘るのに役立つだろう。


 タタニアに吹き飛ばされたホッタンが地面を転がる。最近よく見られる光景だ。


「いててて。タタニア、少し手加減しろよ」

「気合が足りないのさ」

「この剛力女!」

「アハハハ。なんだい、非力男のホッタン」


 ホッタンは九歳ながら背丈は百五十五センチメートル、体重もかなりある。

 体が大きくパワーもあり身体強化魔法を持っているホッタンでも、タタニアには敵わない。

 タタニアは十三歳の女の子であるが、すでに身長が百六十五センチメートルもあり、体格もがっしりして毘沙門党の中では一番大きい。


「くっそー!」


 槌を使うホッタンの動きはやや緩慢だ。

 それでも柄を使って器用に攻撃を防ぐのだが、タタニアはその一枚も二枚も上をいっている。

 子供の四歳差はかなりの差になるが、それ以上の差を感じる二人の実力だ。


「おーい、昼飯だぞー」

「「「やったー!」」」


 太陽が一番高いところにいったので、俺は皆を呼び集めた。

 山に入ってない時はほとんど訓練をしているので、昼は俺が鍋を作って出している。

 これでも村一番の狩人として生計を立てているので、子供たちに昼くらいはご馳走するさ。


 毎回鍋だが、内容はそれなりに変えている。

 基本はチャンコで、狩ったばかりの野鳥の肉とクマ肉を合わせてつくね団子にし、野菜と一緒に煮込む。

 今日はイノシシの骨で出汁をとった豚骨ならぬ猪骨ししこつ塩鍋だ。


 昨日は味噌と醤油を仕込んだ。

 上手く発酵してくれるか分からないが、なんとか成功してほしい。

 味噌と醤油もそうだが、米が食べたい。

 ただ、今のところ米は見たことがないのだ。どこかに落ちてないものだろうか。


「うんめー!」

「美味しい!」

「ノイスの鍋はいつも美味しいな!」


 ちゃんこ鍋は前世でよく食べたし作った。

 出汁さえ取れれば、他は大して難しくない。

 つくね団子にするのは面倒だが、クマ肉を野鳥の肉と合わせることで、より美味しくなるんだ。


「ノイスの料理は本当に美味しいね!」

「クラリッサもたくさん食べるんだよ」

「うん」


 紅一点……いや、タタニアもいるから紅二点、いや、姉たちもいる……まあいい。とにかく、クラリッサは今日も可愛いな!


「なんだい、私に文句でもあるのか?」


 生温かい目でみていたら、豪快にちゃんこを食べているタタニア(ヤンキー)に絡まれてしまった。



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