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第16話 今回は領主の言うことを聞いてあげましょう

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 第16話 今回は領主の言うことを聞いてあげましょう

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 冬が終わり、草木が元気を取り戻し春の訪れを告げている。

 心なしか、小鳥たちのさえずりの声が軽やかだ。


 さて、家族で魔力量を増やす取り組みをしたこの冬だったが、ここまでの経過報告をしようか。


 まず母さんだが、「まったく増えた気はしないねぇ、増えていても微々たるもんだと思うよ」ということだ。


 十三歳のニュマリン姉さんと十一歳のケルン兄さんは増えた実感があると言っている。


 八歳のウチカ姉さんはかなり増えた。


 そして四歳のマルダはなんと大幅に増えた。

 マルダは元々家族の中では一番魔力が多かった。

 全力魔力放出で最初から三十秒もあったのだ。

 それが今では五十秒になっている。


 これらのことから、魔力量を増やす訓練をするのは年齢が低いほどよく、ある程度年齢がいくと増えなくなる。

 よって、魔力量が増えなくなる年齢帯をこれから探ることになる。


 そして元々魔力量が多い人は、増えやすい傾向にあると思われる。

 こちらはあくまでも推測だが、俺も魔力量が増えれば増えるほど、魔力量の伸びがいいと感じていたからほぼ間違いないと思われる。


 家族の魔力増強はこれからも続けるとして、今の俺の魔力は全力発動で千秒を超えている。

 さすがに数えるのが大変なので、細かく数えるのは止めた。

 魔力量は加速度的に増えており、訓練を続ける限りこれからも増えていくだろう。

 そして俺は魔力量を増やす訓練を止めるつもりはない。


 話は変わるが、俺の弓の腕はかなり上がっているのだが、まだまだ実戦で使えるものではない。

 一応、強弓ジュニアはしっかり引けるようになったが、まだまだだ。

 これからも訓練を続け、自信が持てるようになったら実戦に投入する。

 それまではクロスボウのままだな。


 今日は村長の家で会議がある。

 出席者は村長とその息子のトルクさんと四人の肝入りとなぜか俺が呼ばれている。

 おかしいな、俺六歳の子供なんだけど?


「先日、領主様から遣いがきた」


 村長は世間話しをすることなく、本題を切り出した。

 俺の出席について何も言わないのか? 

 肝入りたちも俺がいて当たり前のような顔をしているんだが?


「皆も知っての通り、エイネン城のダミアン家が寝返った。そこでラントール城を強化することになったそうだ」

「それはもしかして……」

「そうだ、この村から八十人の人手を出せと仰っている」


 この村はそんなに大きくないから、八十人も男手を出したらほとんどの家から人を出すことになる。

 中には豪農がいて農奴を使っているが、そこまで大きな農家は少ない。


 城の工事をするために人手が必要なのは分かるが、晩春から夏にかけては農繁期になる。

 その時期に男手を戻してくれるのだろうか? それに給料は出るのかな?


「ラントール城を強化するのはいいが、儂らをちゃんと守ってくれるんだろうな?」


 肝入りの質問に、村長は苦笑した。

 その顔を見る限り、城を強化したところでこの村を守るのは難しいと思っているようだ。


「農繁期にはちゃんと村に戻してもらえるんだろうな?」

「そう言ってはいたが……」


 それも確約はないか。

 領主からすると、村の一つや二つという感じなのかもしれないが、庶民からするとやってられないな。


「とにかく、男衆を集めてくれ」

「気が重いぜ、村長」

「皆になんて説明すればいいんだよ」

「こりゃ、荒れるぞ」


 農家の肝入りたちがぼやいている。

 さっきからロジャーさんは一言も発してないが、いつもこうなんだろうか?


「それからの」

「まだあるのか?」

「年貢を追加で徴収すると仰っておる」

「なんだって!?」

「秋に納めたばかりなのに、また取られるのかよ」

「クソッ」

「麦をあと二割徴収だ」

「それじゃあ、俺たちが生活できないぞ」

「ああ、そんな命令聞けるかよ」

「やってられんな」

「職人も夏に入ったら二割分を徴収するそうだ」

「………」


 ロジャーさんはただ黙って聞いている。

 何か言わなくていいのか? 肝入りなんでしょ? 職務放棄?


「ノイスの肉も前回の五割分を徴収すると、仰られている」

「え?」


 昨年はかなり多くの肉を納品している。

 たしか千二百キログラムくらいだったはず。

 結構な量だと思うんだが、それの五割の六百キログラムを追加徴収?

 言うほうは簡単だろうけど、言われたほうはシャレにならんぞ。


 城一つが寝返っただけで、ここまで増税されるのか。厳しい世界だな。

 こんなことをされては、俺たち庶民は生きていけなくなる。

 なんとかしなければいけないが、庶民の俺ではいかんともしがたい。


「ロジャー。さっきから黙っているが、分かったのか?」

「……話の内容は分かったが、それに俺たちが従う必要はないと思うがな」

「何を言っているんだ?」

「以前、うちの亡くなった爺様から聞いたが、領主が悪政を行ったら、俺たち庶民は一致協力してその領主を追い出したって話じゃないか」

「昔はたしかにそんなこともあったが、儂らを率いて戦う者がおらぬ。それに儂らが立ち上がって領主に勝てるのか? もし勝てたとして、そのあとはどうなるのじゃ? 別の領主がやってくるだけじゃないのか?」


 なんだか難しい話になってきたぞ。

 しかし、ロジャーさんは結構過激な思想の持ち主のようだな。

 でも、考えてみれば、重税を唯々諾々と受け入れる必要はないかもしれない。

 とはいえ、拒否すれば、領主は必ずこの村に兵を送ってくるだろう。

 俺たちはどうすればいいんだ?


「俺たちを率いるヤツなら、いるじゃないか」


 ん? なんで俺を見るんだ? 止めてくれ、俺に衆道の気はないからな!?


「む……だが、まだ若すぎるのじゃ」


 おいおい、村長まで何を言っているんだよ。


「若くても頼りになるぞ」

「「「たしかに」」」


 おうおう、肝入りたちは何を相槌を打っているんだよ。

 俺に何を期待しているんだよぉ……。


「まぁまぁ、今回は領主の言うことを聞いてあげましょう。ただし、あまり酷いようならな、ね」


 トルクさんがまとめたが、皆が俺から視線を離さない。


「ああ、そうじゃな」

「「「そうだな」」」

「俺もそれでいい」


 あんたたち、何を納得しているの? 俺の気持ちは?



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