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不幸買取サービス

作者: のら

お金になるなら売りたい思い出はありますか

貴方の不幸買い取りますよ


最近やたらとテレビで流れてくるこのフレーズ

 最初は胡散臭いと思っていたが

 毎朝早く起きては働いて 冷えた飯を食い

 生きていることにさえ疑問を抱き始めたこの頃は

 むしろこの言葉に敏感になっていた


 

 心奪われた人は離れ

 ただ下げ続ける頭にプライドなどもうとうない

 と考えているうち手に持った携帯には

 テレビと同じ数字が並んでいた


「もしもし、こちら不幸買い取りサービスです」

「あの、僕が会社で起こしてしまったミスや、

 周りからの冷たい目、

 この不幸を買い取ることは可能ですか?」

「はい!もちろん可能でございます。

 50万円ほどでいかがでしょう」

「50万円ですか!?」

「はい!返品は不可能なのですが

 即日お振込させていただきます。」

「はぁ、ではよろしくお願いします。」

 馬鹿馬鹿しい、だが少し気が楽になった。

 こんなことをしている奴もいるんだなと思うと

 むしろ頑張ろうと思えた

 軽くなった気持ちと共に会社に行くと

「おはよう!今日も頑張ろうな!」

 と悪口しか知らないのかと思っていた上司が告げる

 空いた口が塞がらなかった

 机の上には湯気のたったコーヒーが置いてあり

 考えている間に「定時だ!おつかれさま!」

 

 僕は何が起こったのかも理解できず会社を後にした

 もしかしてと思い 口座を開くと

 見知らぬ名前から50万円が振り込まれていた。

 ただただ歩き続けていた暗闇に差した光

 僕は疑いもせず喜び、さらなる光を求めた。

「以前はありがとうございました!

 こちら不幸買い取りサービスです。」

「僕が長年思いを寄せた人との不幸、

 疎遠になった人との思い出、

 身体に及んだ小さな傷も…あと…」

 思いつく限りの不幸を全て

「はい!それでは」

 次の日またお金が振り込まれた。

 

 僕は会社を起業し 人に恵まれ

 とても美しい妻と家庭も持った。

 世のため人のため

 やりたいことは全てやり

 そして、いく年が経ち子供が巣立ち

 幸せに溢れた人生

 それでもなお死ぬまでに使いきれない

 お金と目を合わせていると

 ふと出てきた、「あとは何のために生きればいいんだ」

 なぜか急に悲しくなった

 怪我や病気もなく 何不自由ない生活

 

 なにかが物足りない。

 あぁ、そうか、そうなのか

 

 この悲しい現実を受け入れる他に方法はなかった。

 腹を括った僕は会社を建てた

 

 今日も電話が鳴る

「はい。こちら不幸買い取りサービスです」

人間はないものねだりですね

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