7.ジェーンの思わぬ返答
リアは過去の出来事を思い出したのか、うるうると目を潤ませた。
そんな彼の目元をウィリアムは優しく拭ってやる。
その手慣れた手つきで、リアとウィリアムのただならぬ親密さをハイエナの如き素早さで感知した学友たちはジェーンに手の平を返すように陰口を叩き始めた。
(僕の態度が酷いのならば、この状況はどうなんだ?権力のある者に意地汚くしっぽを振る貴族社会で生きていくには君のような人間はやはり合わないな…)
「ずっと辛く悲しい思いをしてきたんです!…でも、それでも、僕はっ!ジェーンさんとお友達になりたかっただけなんです!」
「そうですか…。では、なりましょう?」
「…えっ?今なんて…?」
「ですから、今からお友達ですと言っているのですけれど?」
ジェーンの思わぬ返答にリアとウィリアムは目を合わせて驚く。
そしてすぐさまウィリアムはリアを背後に隠して、ジェーンを手で制す。
「…何を考えているのだ、ジェーン」
「ふふっ、何も考えておりませんよ?そうですね…、確かに私はリアさんへ厳しい対応をしてまいりました。ですが、それは貴族としてあるべき姿を説いたまで」
「ふん、それだけではないだろう?公爵令息のお前はリアのような下位の貴族を見下していた。だからこそいじめていたんだ」