可愛いって言うのはあなただけ 前編
城内をはぁはぁと息を切らして全力疾走する男が1人。
カーティスである。
彼が走る廊下の端で、侍従や侍女たちは一旦仕事を中断し、丁寧に礼をする。
そして通り過ぎると、皆微笑ましい顔で敬愛する国王の後ろ姿を見つめる。
今日もまた愛する王妃の元へ急いでいるのだ、と。
カーティスは目的地であるジェーンの部屋に到着すると、扉の前で数回深呼吸をした後、髪や服装をサッと整える。
結婚して日は経つが、いつまでも妻にはよく見られたい男心である。
コンコンと扉をノックすると、ジェーン自ら開けて迎えてくれる。
「カーティス様、お待ちしておりました」
ジェーンはカーティスの来訪にこてんと首を傾げ、微笑む。
あぁ、我が妻のなんと愛らしいことか。
心の中でジェーンの可愛さにギュンと心を掴まれながらも、カーティスはどうにか平静を取り繕う。
なんせ20近くも年上。
いつバレてしまうか分からないが、できるだけ長く大人の男の余裕を装いたい。
カーティスの精一杯の強がりだ。
「じゃあ今日も行こうか」
「はい」
カーティスがジェーンに手を差し出す。
すると、ジェーンは嬉しそうにカーティスの手を取った。
安定期に入ってからというもの、2人の間で30分ほど城内の庭園を散歩することが日課となった。




