40.カーティスの願い
朝、カーティスはジェーンよりも早く目を覚ました。
カーティスの腕に抱かれているジェーンの寝顔はひどく無防備だ。
(あの時はまさかこんな関係になるとは思わなかったな)
ジェーンと初めて出会った日、カーティスは退任する前理事長から職務を引き継ぐために学園にいた。
卒業パーティーに出席するつもりはなかったが、甥のウィリアムにはなむけの言葉を贈ろうと会場に足を運ぶことにした。
そしてその道中、泣いている1人の少年を見つけたのだ。
彼の涙の理由を当時のカーティスは転んだせいだと思い込んでいたけれども、少年の正体がアンテノール公爵令息のジェーンだと知り、あれはウィリアムとの婚約破棄が原因だったのだと悟った。
甥による酷い仕打ちに対する罪悪感と夫としての責任から、ジェーンを傷つけまいと心に固く誓った。
だからこそどんなに忙しくともジェーンと多くの時間を過ごすように努めつつ、決して手を出すような真似はしなかった。
だが、いつの間にかカーティスはジェーンに惹かれてしまった。
悲しませたくないという思いは笑ってほしいという願いに変わっていた。
それでも覆すことのできない年の差を気にして、年甲斐もなく抱いた淡い恋心は胸に秘めておくつもりだった。




