3.婚約者の不貞
物思いに耽っていると、会場の扉が大きく開かれた。
出席者たちから沸き上がるキャーという大きな歓声と拍手から誰が来たのかはすぐに察しがついた。
ウィリアムとリア。
そして近侍のロバート、ジョニー、ライアン、シンディー。
人々の間から華やかに着飾った彼らの姿を覗き見る。
リアのいる場所は本来自分がいるべきなのに、と彼を羨ましく思ったその途端、ジェーンの脳裏に身に覚えのない映像が一気に入ってきた。
ウィリアムたちと仲良く談笑する姿、ウィリアムに愛を囁かれる姿。
誰もいない教室や図書館、夜のプールに野外など、学園の至る所で彼とリアが体を重ねる姿。
そしてジェーン自身によって厳しい言葉で詰め寄られる姿。
確実に自分の記憶ではないその映像をジェーンは冷静に分析した。
(…これは、大半はリアさんからの視点の映像だ。でもリアさんと殿下たちが一緒にいる姿もあるから、第三者目線のものもある。それにいくら殿下でも情事は隠れて行っていたはずだから、誰かが見ていた訳でもないだろうに…。何なんだ、これは…?)
婚約者の不貞にジェーンは自分でも驚くほど全く傷ついていなかった。
きっと彼らはもう既にそういう仲なのだろうなと薄々感じていたからだ。