38.ジェーンを愛している
突然の抱擁にジェーンは驚きながらも、その手をカーティスの背に恐る恐る回した。
「なぜお謝りになるのですか?謝られると、何だか悲しい気持ちになります」
「俺、ずっとジェーンから逃げてたから。向き合って拒まれるのが怖かったんだ」
「拒む?僕がカーティス様をですか?」
「あぁ。だって俺とジェーンは20も歳が離れてるんだぞ?ただでさえ政略結婚なのに、その上相手がこんなおじさんじゃ嫌に決まってる。まだ若いジェーンが俺じゃない別の誰かといつか本当の恋をしたら。その時は潔くジェーンの手を離してやろうと思ってた」
「そんなっ…!」
ジェーンはカーティスの隠された胸の内を聞いて、衝撃を受けた。
思い直してもらおうと、彼の手をぎゅっと握って懇願の眼差しで見つめる。
すると、カーティスは少し困ったような微笑みをジェーンに向けていた。
「ずっとそのつもりだったんだけどな…。なのに今日、ジェーンがウィリアムと不倫しているかもしれないってべルから聞いた時。ジェーンを誰にも渡したくないって思っちまった」
「本当…?」
「ジェーン、俺もお前を愛しているよ」
「っ…!僕もカーティス様のこと…、うん?『も』って?」
「えっ?さっきウィリアムに『俺のことを愛してる』って叫んだよな?」




