34.罠の目的
「なぜこんな真似をした?」
カーティスは静かな口調ではあるが、そこには明らかな怒気が含まれていた。
今まで見たことのない主人の姿にべルは怯んでしまう。
だから、代わりにジェーンが答えてやる。
「ベルはね、好きなんですよ。カーティス様のことが」
「あっ…」
「妻である僕はべルにとって邪魔だった。不倫を目撃させて、王妃の座から引き摺り下ろすのが目的。そうでしょう?」
ベルは黙ったままだった。
けれども、その沈黙は肯定と同義だった。
秘めていた恋心を暴かれてしまったベルは唇をわなわなと震わせ始める。
「…あんたにはどうせ分かんないわよっ!このクズウィリアムが失脚したせいで、父もロバートも出世街道から外されてしまった。おかげでキューブ家は貴族社会のいい笑い者よ!その上、ロバートの新事業まで失敗して、私まで働く羽目になって…!城でメイドを始めた私を皆は見下したけれど、カーティス様は優しくしてくれた。私、心から愛しているの。でも、カーティス様にはあんたっていう妻がいる。あんたなんて公爵令息って理由だけで選ばれただけ。お飾りの王妃のくせに、邪魔くさいったらありゃしない!そもそもバカなウィリアムにすら捨てられたあんたじゃ不釣り合いよ!」




