30.ジェーンは疲れる
「あなた、どういうつもりでこんなことを!?ウィリアム様っ!」
ジェーンに抱きついた不届き者はウィリアムだった。
「どういうつもりって…。分かるだろ?夫が妻に会いに来ただけさ」
「つ、妻っ!?僕の夫はカーティス様です。あなたと結婚した覚えはありません」
「俺たちは婚約していたんだぞ?確かに一時はお前ではなく、あの淫乱に惑わされて、結婚してしまった。だが、お前は俺を愛し続けてくれている。そして俺もお前の愛にようやく気付き、応えたいと思っている」
「…ツッコミどころが多すぎるので、一旦放置します。ですが、これだけは言わせて下さい。僕をあなたの妻と呼んだことを訂正して下さい。もう1度申し上げます、僕の夫はカーティス様ただお1人です」
「ふっ、待たせて悪かったな。それも今日までだ。今夜からお前は俺の妻だ」
「はぁ…、妄言も大概にして下さいませ。さっさとお帰りに。今なら元学友のよしみで見逃してあげましょう。その代わり、金輪際顔を見せないで下さい」
ジェーンはウィリアムと会話したこの短時間でどっと疲れてしまった。
そしてペネロペの言っていた『勘違いクズ野郎』の恐ろしさを身を以て感じた。
「ジェーン、愛している。今夜、俺と本物の夫婦になろう」




