24.ウィリアムの訪問
とはいえども、受けた傷は今もじくじくと癒えることなく、ジェーンの中でずっと尾を引いている。
翌朝、ジェーンは部屋の外から聞こえる騒がしい声で目を覚ます。
「…あぁ、またか。はぁ…」
前にも何度も同じことがあったので、声の主はすぐに見当がついた。
ウィリアムだ。
彼は廃嫡になったものの、依然として王族のままである。
だが、『能なし殿下』と揶揄されるウィリアムを受け入れてくれる場所はどこにもなく、役職にすら就くことができない。
あれほど金魚の糞のようにいつでもどこでも付き従っていた近侍たちも今では手の平返しで離れていった。
それでも当の本人は全く気にすることなく、毎日娼婦を呼び寄せては遊び呆けている。
ふしだらな妻に裏切られ、王子という立場を奪われた彼にはもう失うものなど何もないのだろう。
そんなウィリアムが最近になって、時折自分が捨てた元婚約者をこうしてはた迷惑にも訪ねてくるようになった。
もちろんジェーンは会うつもりなど毛頭ない。
もし不倫を疑われてもしたら、カーティスの名に傷を付けることになってしまう。
そもそも憎たらしいウィリアムに会って、今更何を話すと言うのか。
王妃であるジェーンよりも一王族でしかないウィリアムの方が格下となった今、彼を追い返すというのは至極当然の結果だった。




