18.王妃となるメリット
軟禁処分によって外に出なかったお陰で、直接的には晒されなかったものの、アンテノール公爵家を含めて自身がどれほど口さがなく言われているのかをジェーンは知っていた。
「僕はこの結婚でアンテノール公爵家の名誉を回復したいのです」
「ジェーン、お前の言いたいことは理解できる。確かに王家はこの婚姻によって、お前の経歴に傷をつけた責任を取るつもりだ。しかしながら、それはお前のためじゃない。国民からの失われた信頼を取り戻すパフォーマンスに過ぎないのだ。お前も分かっているだろう?」
「大丈夫です。心配なさらないで、お父様。僕の結婚にあるのは愛ではありません、これはビジネスなのです」
カーティスが求めているのは共に国政を担っていくパートナーだ。
そこにあるのが最初から愛ではなければ、裏切りもない。
ウィリアムとの婚約よりも上手くいく勝算がジェーンにはあった。
それに自分が王妃となれば、アンテノール公爵家は権力を手にすることができ、今行っている事業のますますの繁栄は目に見えている。
この結婚は王家にとっても、アンテノール家にとっても、充分過ぎるほどのメリットがある。
それなのに少しだけ、ほんの少しだけ。
ジェーンの頭の片隅に名前すら知らないあの男性がよぎって、切なくなった。