10.本当に不利だったのは?
ウィリアムとリアの顔がみるみるうちに青褪めていく様子を見たジェーンは自分の予想が的中していたのだと確信した。
ウィリアムが婚約破棄しようとしているのを事前に分かったとはいえ、ジェーンがここまで冷静でいられたのは婚約破棄自体をどうしてもこの時期にしなければならない理由を察したからだ。
逆を言えば、映像の中のジェーンはそれに気付くことができなかったために自身の努力と恋心を皆の前で突然踏みにじられたと強く感じて、あれほど取り乱したのだ。
本当は立場として不利だったのはウィリアムとリアの方だったのに。
詰め寄れば勝ちを手に入れられたのはジェーンだったのに。
だが、今のジェーンはそれをみすみす見逃してはやらない。
「な、何のことです?」
「妊娠、なさったでしょう?」
ジェーンがリアの妊娠を疑ったのは彼が見た結婚式の映像でリアのお腹が少しふっくらしていたためだ。
結婚式の時期は分からずとも、ウィリアムやリアたちの髪型が今とほとんど変わりないことからかなり近い未来なのではないかと容易に推測できた。
逆算して、リアが現在妊娠している可能性が非常に高いと考えたのだ。
妊娠が結婚後すぐのことだったとごまかせる時期が今でギリギリだったのだろう。