9.ジェーンの反撃
「ジェーンさん、苦しい想いをされていたのね」
「愛する人のために身を引くなんて、高潔な方だ」
と出席者たちの間からはジェーンを賞賛する声が聞こえてくる。
権力と同じくらい世間体を重んじる彼らはこのような美談に悉く弱い。
学友たちはすっかりジェーンの味方になっていた。
ウィリアムが状況を鑑みて、このまま受け入れてくれたら丸く収まるはずだ。
ジェーンはそう考えていた。
しかし、事は上手く運ばない。
「…ジェーン」
「殿下!ジェーンさんは僕に嫌がらせを重ねていたのですよ!許してはなりませんっ!」
『友達になりたかった』と言ったその口で、リアは声高にジェーンへの処罰を求めた。
(今は婚約破棄の話をしているのに…。大体嫌がらせって、そもそも彼の非常識で突飛な行動を咎めただけなのだが…。はぁ…、「主人公」はどうしても「悪役」に罰を与えたいようだ。だったら、こちらも反撃させてもらおうか?)
「そ、そうだな。リアの言う通りだ。ジェーンからの婚約破棄はこの場にて受け入れるが、リアへの嫌がらせの件については処分を与えることにする」
「そうですね。リアさんへの非礼を考えると、それは妥当でしょう。それでも婚約の解消を受け入れて下さって、本当に本当に良かったです!これで、リアさんのお腹の子どもはお父さんと一緒に過ごせますね?」