表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草少女と花の国  作者: 山名真雪
雑草少女と不治の病
83/120

魔物の正体


「私が見えてるの……?」


そう声をかけると、コウエイは小さく微笑む。


「ことはもう止められない所まで来ている。十分注意することね」


「珍しいこともあるものだ、他人の心配をするなんて」


くすくすと腕を組み、リーク様は笑う。

けれど、その言葉はリーク様ではなく私に向けられている気がした。

視線が合い続ける目が、訴えかけているようだったから。


「さてと、時間ですから行きます。ではまた」


椅子から立ち上がり、リーク様は闇に消えた。

足音も去っていき、私とコウエイだけが残される。


「シオン、よね」


「え、はい。やっぱり、私が見えてるんですか」


「もちろんよ。だって、私とあなたは繋がっているから」


「繋がっている……? それはどういう意味ですか」


「私とあなたはとても深いつながりがあるの。それに、あなたは虹脈を取り込んだ。あなた、配給された食事を摂ったでしょう。あれは、虹脈を細かく砕いて混ぜている」


「そんなもの、どうして」


「虹脈と繋がる人間を見つけるためよ。その理由、知っているのでしょう」


「……虹脈様の力を使って、願いを叶えるため……?」


そうよ、とコウエイは微笑む。


「あの人達は言葉も持たぬ虹脈と意思疎通を図るため、人に虹脈を飲ませて虹脈と人との境を曖昧にし用としてる。だから、こんな非人道的なことも、でき、る……」


「コウエイ!?」


コウエイから微笑みがふと消え、表情が曇る。額からは汗を流し、苦悶に歪んでいく。


「どうしたの、コウエイ!」


「時間が、ない。お願い、この子を助けて。あなたらならきっと出来る……! あなたは私の――」


コウエイの手が、足が、強張って。

虹色の鱗が皮膚を変えていく。それは、魔物と同じ姿形に成して、コウエイの姿を覆い隠した。


「…………オン……シオン!」


「コウエイッ!!」


自分を呼ぶ声に、眼の前のコウエイの姿が霧散した。

入れ替わるように、必死に私の名を呼びながらロイさんが肩を揺さぶっていた。


はぁはぁ、と息がうまく出来ない私の背をゆっくりと撫でる。


「御婦人、どうかしましたか」


私の様子を不審思ったのか、一人の衛兵が近づいてくる。不敵なのっぺりとした笑顔を浮かべて。

笑っているのに、笑っていない……。


「いえ、ご心配なく」


ロイさんも不穏な気配に気がついたのか、私と近衛の間に割って入る。

私を背中で隠しながら、きっと警戒を込めて睨みつけた。


しかし、衛兵は気にすることなく近づいてくる。


「いやぁ、御婦人顔色が悪いようですよ。こちらで診ましょう。さぁ、どうぞ……?」


ねちっこい笑顔と声を発しながら、その手は私に触れようと伸ばされる。


「シオン、ごめん……!」


「は、はい!!!」


「待て!!!! その二人を止めろ!!!」


くるりと身を翻したロイさんは、私の手を取って走り出す。

走り出した背に、衛兵の鋭い声が突き刺さる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ