こちらに向けられた忠告
「いや……来ないで……嫌だぁぁぁっ!」
絶叫とも呼べる喉の限界を超したコウエイの叫び。
眼の前で起きているこの光景は何?
リーク様は何をしてるの……!?
苦しみだし、血を吐く姿にリーク様は意に返さない。むしろ冷静に見下ろすだけだ。
コウエイ! と呼びかけるがやっぱり反応はない。
やがて、苦しんでいたコウエイはぐったりと動かなくなった。
「そろそろか。聞こえてますか」
気を失ったコウエイにリーク様は呼びかける。
ぴくりと、それに答えるように指先が動く。
「あなたも懲りない人。またこの子に無理をさせるなんてどうかしてる」
目を開けてゆっくりとリーク様の方へ向いた、コウエイの表情は大人びていて、いつもの無邪気な子供の表情ではなかった。
「こうでもしないと、あなたとお話ができないじゃないですか。いつもあなたと話せれば、こんなことする必要はないんですがね」
リーク様は腰を据えて話をするつもりらしく、椅子を持ち出して拘束椅子の横に座る。
「そろそろ私達に手を貸してくれる気になってくれませんかね」
「いつもの話? カロラ王国を護る神様になれ? 虹脈様の力をこの国のためだけに使わせようっていう傲慢な願いは虹脈様は聞かないわ」
「それは残念。あなたがどうにかして話をつけてくれるとありがたいんですが、いかがですか」
「だからいつも言っているでしょう。私と虹脈様は別。虹脈様の言葉は分からないし、虹脈様の意思は私ごときで変えられないわ」
そうでしたね、とリーク様はいうが全然残念そうには見えない。ただ事務的に淡々と話を進めていくだけだ。それを分かっているのか、コウエイの姿を借りた虹脈様の一部らしい誰か、も淡々と答えていた。
「それでもあなたにお願いするしか無いんですよ。虹脈の一番近くにいるあなたに」
「それは間違ってる。私よりももっと近い場所にいる者は他にいるわ」
「……何?」
初耳だ、と聞き捨てならないと言いたげにリーク様は眉をしかめる。
それを見て、コウエイの姿を借りた何者かはさも面白いと言ったふうに笑う。
「思惑が外れてしまうのはお生憎様。ことはそう簡単には運ばないわ。それにあなたと私の接点もここまでになる。もう、この身体は保たないでしょう。時を待たずして、終りが来る。いつものようにね」
「ならば、また代わりを探すだけですよ。それにあなたは今、虹脈にもっと近い人間がいると言った。その人間を探すまで」
「それこそ上手くいくかしらね」
そういうとコウエイの視線がこちらに流れてくる。
視線がバチリと合い私は目を瞬かせた。




