繋がった先に
浮浪者や、怪我を負い倒れている者。
その中には黒い髪をした、姚国の人間も混じっている。けれど、どうにも出来ない。
もしかしたら、あの病がこの人たちを蝕んでいるのかもしれないと思うと、恐ろしくもあった。
もしかしたら、私も同じようになるのかもしれないと思うと。
身震いを覚えながら、進んでいるとこの裏路地には珍しいいい匂いがしてくる。
どこかで炊き出しでもしているのだろうか。
ここに来てからというものの、食べ物はロイさんツテ……アシビさんからのがあるが贅沢は出来ない。今はなんとか受け取っているが、いつその宛が外れて食糧供給が絶たれるかもしれない。
最悪の事態は想定しておくに限る。出来るだけ温存しつつ、別の宛も持っていたほうがいい。そう思って、匂いがする方へと誘われていった。
そこは少し開けた広場のようなところだった。
と言っても城下町で見た噴水が合ったりするわけではなく、ただただ開けた場所があるだけの質素なものだった。
簡単に設置された屋台のようなところに、人が群がっている。
どこから集まってきたのだろうという程に賑わっていた。
そして、ここにいるすべての人は飢えた獣みたいだった。お腹を空かせ集まってきた獣。
今は行儀良く並んではいるが、ギラつかせた目は今か今かと鋭く光る。
やがて、配給が始まると人の波はわっと屋台へ集中する。人の波はさながら一つの生き物のようだった。見境なく動き出す波に一瞬にして飲み込まれる。
その波に抗おうとするが、私一人の力じゃどうにもならない。やがて、並んでもいないのに事務的に食料が手渡される。野菜スープと焼き立てのパン。
食欲を掻き立てるには、十分だった。
食事は取ってきたはずなのに、なぜだろう。すごく食べたい欲が溢れる。
「さぁ、どうぞ」
機械的に衛兵の一人が言う。スプーンを持つ手が震えて、うまく力が入らない。まるでなにかに取り憑かれたようなそんな感覚だった。
普通だったら、こんな感覚にさせられる怪しい食べ物なんて口にしない。
けれど私はその言葉に素直に従う。そう思わせる力があった。口に運ぼうとした瞬間、あの声が聞こえる。
――食べては、だめ! これ以上は、繋がってしまうから……!
けれど、私はその言葉を理解する前にそれを飲み込んでいた。
眼の前の光景が遠くなる。
色のついた世界が黒で塗りつぶされていって、やがて見えなくなった。




