後悔先に立たず
「その病は、数年前から流行りだしました。それは突如現れて、人が次々と死んでいった。呼吸困難で苦しんだ者、全身の痛みにのたうち回った者、いずれも症状は違うけど、死ぬことには変わりがなかった」
語りだすコウエイの表情は暗い。
その当時は今も、コウエイの心の棘になっているのだろう。
「ここいる人達が、呆気なくバタバタ死んでいって成す術もなく生き残った者は次は自分かと怯えるしか無かった……」
今でも思い出すと怖いです、とコウエイは身体を縮こませ己を抱きしめた。
「だから、私達はこの国に訴えた。この病を治す方法を、自分たちを助けてほしいと……けれど、一切聞く耳は持ってもらえなかった。私達の訴えを無視して、なかったことにしました。直に訴えに行った人たちは、誰一人帰ってこない。私のお父さん、お母さんも……」
身を縮こませたまま、コウエイは膝に顔を埋めた。静まり返った空間にコウエイの泣き声だけが響く。それも全てを押し込めた、噛み殺した声で。
「コウエイ、ごめん。話してくれてありがとう」
きっと、思い出したくない過去だったに違いないのに。
―――――――――
一つの毛布に、私とコウエイは包まる。
泣き疲れたコウエイは、私の横で蹲って眠っていた。
人恋しくなったのかもしれない彼女を、放ってはおけず頭を撫でた。眠っているにも関わらず、無意識に擦り寄ってくるから、微笑ましくもなり苦しくもなった。
本当だったら、コウエイは両親に囲まれてこうやって寄り添いあっていたはず。なのに……。
けれど、それを言ったら、言ってしまったらいけない。
それは、ロイさんを、ローレル様を責めていることになるから。
「シオン、起きてる……?」
わずかな衣擦れの音がして、ロイさんがコウエイを起こさないように小さな声で呟く。
暗闇の中、殆ど見えない。が、ロイさんがこちらを向いたのは気配で分かった。
起きていますよ、と返事をするとそう、とだけロイさんは言った。
「……知らなかった。病のことも、直に訴えに来た人たちがいたことも……。ずっと国の真ん中にいたのに、情報を遮断されてたのか……」
苦々しく、悔しさの滲む声がした。
「恐らく、姚国の人たちの訴えを僕の耳に届けさせないようにしてたんだ。僕が知ったら、事が大きくなるって思われたんだろうな。事実、その時知ってたら、大々的に動いてたのに……」
独り言のようにこぼれ落ちる言葉に、私は耳を傾けた。




