じっとしてはいられない
その日、コウエイは出かけていていなかった。
どうやら、やることがあるらしくさっさと例の入り口から出ていった。
取り残された私とロイさんは、各々黙っていた。
ロイさんは何やら考え事をしていたし、私も考えたいことがあった。
「コウエイの話、気になるね」
「特別な虹脈の話、ですよね」
どうやら、考えていたことは一緒だった。
「ずっと考えていたんです、特別な虹脈、言葉を交わせる神様っているんだろうか、って」
薄暗い天井を見上げながら、私は考え続けていた。
お父さんが、何を考えているのか。
言葉を交わせる神様がいるのなら、何を願うのだろうと。
「僕もずっと考えてたよ。もしそんな虹脈があるなら、この国も知ってるって考えたほうが良い。眉唾物ではあるけど、ここにその噂が来てるならリークたちが知らないはずがない」
「そうですね」
「少し、内部を探ってくる。いくら追放されたからって、完全に城の中に味方がいないわけじゃない。手伝ってくれる人はいるから」
「気をつけて……いってらっしゃい」
外へ向かっていくその背に言葉をかけると、ロイさんはニッコリと笑った。
「大丈夫、そんな顔しないで。行ってきます」
手を振り、ロイさんもコウエイと同じように行ってしまった。
一人留守番、は出来そうになかった。
コウエイも、ロイさんも何か目的を持って行動している。それなのに、私は一人、こんなところにいても良いのだろうか。
「良くはないな……」
自分も何かをしなければならないと、心の内側から責め立てられるような気になってくる。
「だめだ、立ち止まってはいられない」
私も外へ出よう。きっと、まだ姚国の人がいるはず、話を聞いて情報を収集しよう。
そうと決まれば、行動あるのみだった。大事なものは逆に持っていると失くす可能性があるので、ここに置いて行くことに決めた。
必要最低限、本当に着の身着のままの状態で外へと飛び出した。
入口がバレないように、元に戻し路地裏に降り立つ。
人の気配は、無い。今は誰も近くにいないようだ。
まだ、道が分からないので迷子にならないように近場で探そうと決め、同じような町並みが続く道筋を覚えながら前へ進んだ。




