あの頃と同じ
結局私達は、コウエイの言葉に甘えここでを拠点にさせてもらうことになった。
三人での生活は順風満帆とは言えなかった。まずは食料問題。三人分の食料をどう手に入れるかだった。ただでさえ、ロイさんは男の人で誰よりも食べる量が多い。私の分を削るか、と考えているとその日帰っては来なかった。
コウエイと心配になりながら待っていると、大きなリュックを背負ったロイさんが帰ってきた。
その中は保存の効くチーズや、生米が入っていてコウエイが目を輝かせている。私はこの出処が気になって仕方がなかった。
「本当は……巻き込みたくなかったんだけど……アシビがククルを使って連絡してきたんだ。本当に怪我をしたのか、シオンはどうしている、とね。内部にいるからすぐにおかしいってことはバレたんだと思う。アシビに隠し事はできないね」
「アシビさんが……用意してくれたんですね」
「そうだよ。ツテを使って間接的に僕達の手助けを買って出てくれたんだ。だから当面食料は心配しなくてもいいと思う。連絡は勘付かれるとまずいから、最低限だけどアシビも僕らの味方だよ」
アシビさん、と心のなかで呟く。
ろくに説明もできないまま、別れたきりだ。いつ会えるかわからないが、いつか会えたならお礼を言おうと決めてもらった食料に手を合わせる。
「美味しくいただきます」
貰ったものには礼儀として手を合わせて有り難くいただく。それも姚国の習わしだ。
本当に、人の温かさに胸がいっぱいになる。
「まずは腹ごしらえといこう。それから、この路地のことを教えてほしい。隠れたままとは行かないから」
「分かった。答えられることは何でも答えるよ」
眼の前の豪勢な食べ物に目を奪われたまま、コウエイはいつも以上にはしゃいでいた。
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いつの間に私達は喋ることもせず、ただ黙々と食事を続けていた。意識はしていなかったが、相当空腹を抱えていたようで、一つ胃に納めるとあとは無心に食べ続けた。
ある程度食べ終わると、口の周りを汚したままコウエイはお腹を擦りながら天井を仰ぐ。
「まずはこの路地でのことを教えるね。ここでは簡単に誰かに物をあげたり、隙を見せちゃいけない。感じたと思うけど、誰が見ていて奪いに来るかもしれない。殺伐としたところだから、油断しないで」
「……分かった」
ロイさんと私は頷きあう。
確かにコウエイにパンを渡した時感じたそれは、殺気だったと思う。
けれど、その殺気はここに来るよりも遥か前に、経験していた。
そう、雪に覆われて滅びゆく姚国の中で。




