破壊された街の中で
気がつくと、あの丘の上で地べたに倒れていた。すっかり日は傾き空が茜色に染まる。
ぼんやりとしていた視界がくっきりすると、ゆるゆると体を起こした。
「私……寝てた……?」
倒れる前の記憶が曖昧だ。
虹脈様に手を伸ばして触れた所までは覚えている。
それに、夢を見ていた。ローレル様とリーク様たちの会話を。
あれは……本当に夢?
あまりにも現実感がありすぎる。
ぼんやりとした意識でも、記憶はくっきり残っている。私はその場にいなかったはずなのに、会話も息遣いも、雰囲気も目に焼き付いている。
「虹脈様が、ない……!」
うう、と頭を抱えながら上げた目線の先に、あったはずの虹脈様が無かった。
意識を飛ばす前までは確かにあった。
けれど、今は虹脈様はなく剥き出しになった地面があるだけだった。
「夢じゃない……? じゃあ、ローレル様は!?」
あれが本当のことなら、ローレル様は城を追い出されてしまった。
しかも、リーク様と仲違いして。
このままじゃいけない、と私は城へ走り出す。
ふらふらの足元の中、瓦礫をかき分けて城を目指していると、見た事のあるシルエットがゆっくりとこちらへ歩いてきていた。
私を城下町へと案内してくれた時と同じ服の……ローレル様だ。思わず私は駆け寄る。
「あっ、シオン! ぶ、無事でよかった……」
俯き気味で歩いていたローレル様が、私を見るなり顔を上げてぱぁぁ、と明るく笑う。
それが、私には無理やり笑っているように見えた。
「ろ、ローレル様……その……」
口を開いたのはいいものの、なんと言葉をかければいいのだろう。
「どうかした……? 傷痛む?」
いつもの変わらない振る舞いをするローレル様に、私は首を横に振る。
ローレル様も心の整理が必要なのかもしれない。それにきっと、リーク様の話をしても素直に話してくれるとは思えなかった。
今、ローレル様が普段と変えない決めたなら、私も変わらずにいようと心に決めた。
「なんでもありません。ローレル様、これからどうしましょう……?」
何も無い、という表現が的確で。
破壊された城下町をローレル様と私は半ば呆然と眺めた。
当たりを見回しながら、ローレル様はうーんと首を傾げる。
「まずは、女将さんの所へ行こうか。無事かどうか心配だしね」
「そうですね」
女将さんは無事に逃げきれただろうか。
ローレル様も私も心配だった。




