傷口
その後、ローレル様が呼んだ医師に診察受け、念の為一日中寝ていた。
「それにしても、シオンの傷の治りが早くて驚きましたよ。三日寝込んだと思っていましたが、それでも医師が驚くくらいですからね」
感心したように、リーク様は言う。
そう、私は魔物に引き裂かれた胸の傷のせいで、三日間寝込んだ。傷口が膿み、高熱を出したのだがたったの三日で症状は良くなったのだ。
今はもう、傷口は塞がって僅かに皮膚が引っ張られるような感覚になるだけだ。
医者も首を傾げる回復力だが、経過は順調らしい。
ですね、と私も頷く。
元より小さな傷等はすぐに治っていた。
だけど、こんなに大きな傷まで直ぐに治っていくなんて思いもしなかったのだ。
自分の体だが、まさかの自体に驚きを隠せなかった。
「 シオンが直ぐに良くなって、何よりだよ。今は沢山食べて、体力つけて。まだまだ本調子じゃないだろう」
そういうローレル様に誘われて、夕食の時間だけは起き上がりテウジの城の食堂へ来ていた。
八人は座れるであろう長いテーブルに、赤いクロスが引かれている。その真ん中には黄色いチューリップが飾られていた。
部屋はシャンデリアで照らされていたが豪華過ぎす、
控えめなデザインで落ち着いた雰囲気を醸し出している。
目の前にはリーク様とローレル様が座り、一緒に食事を摂っていた。
初めて会った時と同じ光景に、私は少し笑ってしまった。
どうしたの、と首を傾げる二人に初めて会った時のことを思い出して、と答える。
「私がお出ししたお茶を飲んでもらったなと思って。二度とこんなふうに食事を摂ったり、お茶をしたりするなんてないと思ってたんです。まさかまたこうしているなんて何があるか分かりませんね」
「そうですね、短い間に色々ありすぎましたし」
紅茶を飲みながらしんみりとリーク様が言った。
「本当だね。シオンには危険な目に遭わせちゃったし、申し訳ないよ」
ローレル様はずっと謝ってばっかりだった。
一国の王子として責任を感じているのかもしれないけれど、ついていきたいと言ったのは私なのだ。
危険を重々承知で決断したのだから、ローレル様を責めるつもりもない。
そのことを告げると、ローレル様は幾分表情を和らげる。
「私は私のしたいことをしただけです。むしろ迷惑をかけてしまったのは私の方」
同胞たちが、あんな恐ろしいものを従えているなんてそれこそ予想出来なかった。
どこであんなものを手に入れたのかは分からないが、再び出会うことになっても止めたい。
きっと魔物と呼ばれるものは、良くないものだ。
従えてはいけない何か、な気がする。
妙な胸騒ぎが魔物を思い出す度に色濃くなっていった。
「いいや、それこそシオンが気に病むことじゃない。彼らがカロラに一矢報いたいっていう気持ちが分かるから」
「だからって、この国に彼らは外から来たのだから多少の不満はあっても折り合いをつけて貰わないといけないと思いますけどね」
ローレル様がそう言うが、リーク様の意見は少々違う様だった。
ローレル様は姚国を思ってくれているようだが、リーク様は逆なようだ。
「シオン、気に障ったならすみません。ただ、こちら側にもいろいろありまして」
「いや、それは……」
カロラの国の内情に詳しくないからなんとも言えなかった。
ただ、あの冬のままの雪に閉ざされて凍える大地から、命からがら逃げ出した私たちを受け入れてくれただけでも良しとしなければいけない。
もっと、私たちに寄り添って欲しいなんて我儘だ。
そう、思っている。




