カロラ王国の子供たち
そんなシャントリエリさんは私を見るなり、目を吊り上げた。
その手はとめずに、怒鳴り声をあげる。
「早くしな! もう食事の時間が来るんだからね! これが終わったら洗濯掃除、本当忙しいんだから!」
「すみません! すぐします!」
頭を下げ、腕まくりをすると
、すぐに食事の支度の手伝いに加わる。
シャントリエリが作った料理を、大皿に乗せ手早くテーブルに並べる。
そして人数分、子供が15人、大人2人分のカトラリーを並べたりなどをしていると、起き出してきた子供たちが席にチラホラとつき始めた。
一気に騒がしくなった食堂。
しかし、動き回っているのはシャントリエリさんと私だけ。誰かが手伝おうとはせず、今か今かと食事にありつけるのかを待っている。
後から、神父でありシャントリエリの夫であるフォン・ベラドンナさんが入ってくる。神父の格好をし、白髪混じりの髪をきっちりと整えた彼は、両手を広げて言う。
「さぁ、皆、神に今日も祈りを捧げましょう」
その一声で騒がしかった食堂に、静寂が降りる。
フォンさんは、周りを見渡し、続ける。
「今日も一日始まることを感謝いたします。私たちは今日も善良に、慎ましく生きると誓いましょう、さぁいただきます」
いただきます、とここに居る全員が手を組み、数秒祈りを捧げると、一斉に食事の時間が訪れる。
この孤児院の子供たちの年齢はバラバラだ。
下は乳児から上は18歳まで。
各々、大家族で口減らしのため、貧乏、親が病気などの理由により預けられている。
そんな中、私は父とカロラ王国に来た時に別れてしまい、そのまま行方知れずになってしまった。
きっと迎えに来る、と言い残して。
だが、一向に戻らず気がつけば12年の月日が流れ、18歳になってしまった。
その約束を信じて、姚国の教え、父に教わった言葉を守る。あるがまま、流れるまま受け止める。全てをありのままに良しとする、ということを。
だから、今目の前にある全てを受け止めてただただ受け入れるのがいいのだ。
ぼんやりと考え込んで、部屋の隅で控えていた私の耳に、嫌がおうにも悪口が聞こえてきた。
「なぁ……アイツいつまでいんのかな?」
「さぁ? でも、そろそろここでなきゃいけない歳だろ?」
くすくす、と笑う孤児院の子供たち。私は立ち尽くしたまま考えた。
確かに、孤児院を18歳前後で出なくてはいけない。いわば、独り立ちの時期なのだ。近々出て行かなければいけない年齢だ。
けれど、お父さんが戻ってくるかもしれない。明日か、明後日か分からないけど。
だから、一日でも長くここにいないと……。
「でも誰が、あいつを必要としてくれるよ? 姚国の人間だぜ?」
「確かに! 誰も欲しいって思わないよな! あんな遅れてる国なんて!」