新しい未来
新たな関係を築きたいのは確かだ。
だけど、それよりも強く私はここに残っていたかった。
許されるなら、ロイさんの近くに……。
「私の中にある虹脈様の力を、カロラの為に使うのは十分可能だと思います。それに、私はそうしたい」
「……いいのか」
リーク様が私を真っ直ぐ見つめて言った。
今までのことを含め、リーク様はそれでもいいのかと問う。
帰るなら今だ、と言いたいのだろう。
だから、私ははっきり告げる。
「はい、私はここにいたいです」
それは本音だ。私は姚国ではなく、カロラにいたい。
「分かった。ならば、その申し出受けさせてもらいたい。あなたの姚国への帰還を約束し、シオンのこの国に滞在するのを許可します。双方の身の安全を私達は保証しましょう」
リーク様に私の決意が伝わるように真っ直ぐ見つめると、深くうなづいてくれた。
ロイさんもどこか嬉しそうな顔で笑っている。
それだけで、私はふたつの国の行く末と、私の心が浮ついているのを感じた。
――――――――――――
落ち着かないカロラ復興の中、リーク様は出来るだけ早く姚国へ帰る船を用意してくれた。
姚国へ帰るには海を渡らなければならないからだ。
港には姚国へ帰る為、コウちゃんにコウエイ、お父さん。
そして、見送るリーク様とロイさんが桟橋で静かに船の出航準備を見ていた。
私は少し離れ、お母さんと二人海を眺める。
「お母さん、ありがとう。お母さんは私がここに残れるようにしてくれたんだよね」
海から目を離さずにあの時、シオンをカロラにと申し出た時のことを話す。
お母さんも陽の光が反射する水面を見たまま答える。
「そうね。言ったでしょ、全部見てたって。それにシオンとは虹脈の関係で繋がってたから、全部伝わってきてたわ。もちろん、悲しいことも全部、ね」
ふふふ、とお母さんが笑うから私は自然とお母さんを見た。
「まぁ、それだけじゃないわ。姚国もカロラもこれから新しい関係を築くの。その架け橋になる人が居なくちゃいけない。その役目をシオンが背負うの」
出来る? とお母さんは私に聞いてくる。
私はうん、と頷く。
「ならいいわ。それを忘れずに居てくれるなら、お母さんは言うことは……あぁ、ひとつあるわね」
なぁに、と首を傾げるとお母さんは私の頭を撫でる。
「幸せになりなさい。あなたが居たい場所であなたが大事に思える人を大切に」
「……うんっ!」
お母さんの願いに、私は強くうなづいた。
やがて、船が出航するとロイさんが呼びに来てお母さんたちは船に乗り込んだ。
私はその様子を桟橋から見守る。
しばらく、お母さんには会えないかもしれない。
それに、残った私のような姚国の人間はまたカロラの人の白い目に晒されるかもしれない。
だけど、私はもう一人ではないしカロラの味方と呼べる人もいる。
きっと、ここでやって行ける。
大きな汽笛を鳴らして、船は波をかき分けて進んでいく。
私は船が小さくなるまで手を振って見送った。
「本当に良かったの?」
静かに隣に立っていたロイさんの問に、私は顔を向けた。
「いいんです。私がこうしたいって思ったこと、ですから……それに、私はロイさんやリーク様に感謝しないといけないんです。コウちゃんやコウエイ、お父さんのこと……」
少なら駆らず事情があったとはいえ、カロラに甚大な被害をもたらした。
未だにその傷は癒えず街のあちこちに生々しく残ったまま。
本来ならばカロラの国から出られず、拘束され罪を暴かれ罰を受けなければならない。
だけど、リーク様やロイさんは姚国への帰還を許したのだ。
「そんな大それたことをしたつもりは無いよ。それに、私たちのしたことも許されないことだったって思っているから」
両者痛み分けだと言いたいらしいロイさんは、少し困った表情で笑う。
きっと反対意見も出てただろう、それをねじ伏せてくれただろうことは容易に想像が出来た。
「それに、彼らもこれからの未来に必要な人だと判断したまでだよ。君のお母さんがしっかりしてくれそうだしね。その未来を見てみたくなったんだ」
遠くて近い未来に思いを馳せるロイさんに、私も同じ想像をする。
これからふたつの未来に、私とロイさんはいるんだろう。
「あの、ロイさん私もお願いがあるんです」
「ん?何?」
これからいう言葉が、恥ずかしくて私は俯く。
もじもじと自分の両手を弄りながら、口からこぼれるように言う。
「これから、あなたのそばにずっと居ていいですか」
それが告白だと、分かっていた。
大事な人、私の隣に居ることを選んでくれた人。
だから、私もちゃんと選んだ。
「ふふ、今更だよ。僕も、君の隣にいたい」
ロイさん、と名前を呼ぼうと顔を上げた瞬間ロイさんに抱きしめられる。
その手は震えていて私も無性に泣きたくなった。
言葉が出ない代わりに、私も強く抱きしめ返す。
それだけあれば、私たちは何も要らなかった。
私はカロラで生きていく。
カロラで出会った大切なこの人とずっと。
終わり
これにて雑草少女と花の国は完結しました。
すごい長い上に、時間がかかってしまいました。
プロット無しで書きたいものを書きたいように書いたので、まとまり感がないなと今は思っています。
プロット大事ですね……。
今まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
またどこかでご縁がありましたら、また読んでくださったら嬉しいです。
本当にありがとうございました。
2020.6.30 真幸




