王都、フロルでの再会
「な、なんですか……?」
周りの人達は、なんだなんだ、とこちらを伺うだけで私を助けてくれそうな人は居ない。
周囲の視線を感じながら私は震える声で言った。
ハンナは突然の大声に驚いたのか、前足で地面を蹴って苛立ちを見せる。
「貴様、どこのものだ。その馬はノビリス様の馬とお見受けするが、どこで手に入れた?」
剣の切っ先を私に向けたまま、ジリジリとにじり寄ってくる。
背後の衛兵も近づいてくる気配がして、円形に囲まれる。
「えっと……、わ、私はロベリア教会の孤児院から出てきたばかりで……その、ハンナはそこから着いてきてしまって……!」
そういえば、ハンナは王族の馬だった。余生を送るためにロベリア教会に預けられていたのに、ここにいること自体がおかしい。盗んだ? 連れ去り? どれに当たるか分からないけど、疑われても仕方がない。
正直に話すものの、信じて貰えそうにない。むしろ疑念を抱かせてしまった気がする。
それでも、嘘をつく訳にはいかなかった。
「ロベリア教会に戻れないから、一緒にここまで来てしまったんです……!」
「嘘をつけ! ロベリア教会からは、連れ去られ行方不明だと報告が来てる。貴様が連れていったんだろう!」
「それは……!」
流石に、ハンナが居なくなったことは直ぐに連絡していたようだ。
しかも連れ去られた、って……。
どうみても、教会から出た私に容疑がかかる……。
でも、ハンナはこうしてここに来てしまった以上言い訳が立たない。八方塞がりな状況に頭を抱えた。
「やはり、罪人か!? 大人しくしろ!」
「ちょっと、待ってくださいッ!!」
私の言葉なんて届かず、衛兵は構わず剣を振りかざしてきた。
既のところで交わすが、呆気なく体制が崩される。避けた弾みで前に倒れ込んだ隙を見逃してはくれない。すぐさま衛兵達が私に馬乗りになり、手や足を押さえつけ、持っていたハンナの手綱を奪い取って行った。
ハンナも暴れるが、奇しくも引き離されしまった。
「やめて! 乱暴にしないで!」
唯一、自由な首を必死に動かして叫ぶ。
動かした首から、カランと音を立ててローレル様から受け取った鳥笛がこぼれ落ちる。
「こ、これはローレル王子の!? これも盗んでいたのか!?」
「ちが、違うんです……! 私は、ローレル様と……聞いてもらえれば分かります!!」
「そんな訳あるかッ! 貴様のような、平民にローレル様がお会いするなどとッ!!!」
痛い、と埋めくことしかままならない。
誰か、お願い、助けて……!
涙が零れ目を強くつぶった、その時だった。
遠くの空から、歌声のような鳴き声が響く。それは美しい、あの声だ。
目を開いて、空を見る。太陽の光を背に背負い、その白い鳥は舞い降りた。
「ククル……!」
その名を呼ぶと、ククルは甲高い鳴き声を上げて急降下、そのまま鋭い爪で衛兵の頭を薙ぎ払っていく。
「うわぁっ!?」
「ぐはぁっ!?」
次々とその鋭い爪で襲いかかり、ハンナの手綱を持っていた衛兵はたまらなく手を離した。
その瞬間を見逃さず、ハンナはさっと逃げおおせ、ククルに加勢した。
私を押さえつけていた衛兵たちに、見事なまでの後ろ蹴りを食らわせる。
衛兵たちも山賊と同じように、ばたばたと倒れていく。
すごい、凄いけど……!
「もう、大丈夫だよ! 二人ともやめてッ!!」
私はとっくに衛兵の手から逃れ、ハンナの手網を手繰り寄せる。
それでも、ハンナもククルも攻撃の手を緩めなかった。
これじゃあ、収拾がつかない……!
「ククル、ハンナ、止まれ……! 」
そこに、馬の走る足音。
そして、ローレル様が黒い馬に跨り颯爽と現れた。
その黒い馬の手網を引くと、大きな嘶きと共に後ろ足で馬は急ブレーキを掛けて止まった。
その場は一瞬にして静まった。




