新たな関係
そう、あの時お母さんと私で虹脈様を対峙したあの瞬間。虹脈様と交わしたのだ。
そして、虹脈様は自身の力を沈め私とお母さんの中に力を分かち眠っている。
姚国へ、帰るために。
そう、私は姚国に帰らなければならない。
私の中にある虹脈様を背負って。
ずっとずっと姚国に帰りたいと思っていた。
姚国の夢を何度観ただろう。
虹脈様が姚国に戻ってきたなら、と願ったのは1度や2度じゃない。
だけどそれは出来ないことだと、例え出来たとしてもしてはいけないのだと思っていた。
けれど今、それが出来ると分かってしまった。
自分の中にいるのは、自分を活かしているのは虹脈の力だと知ってしまったから。
私が帰ったら、虹脈様は姚国を元に戻してくれるだろう。自然豊かな地に。
それが虹脈様の願いだから。
私は帰らなければならいない。
なのに。帰りたくないと思ってしまうのは、カロラを離れたくないと思ってしまうのは……。
私の気持ちとは裏腹に、お母さんは話をどんどん進めていく。
「もう、虹脈様はこの地には根付いていません。もう、この国にはありません」
「……ええ、困った事態ですよ」
腕を組み深く息を吐いたリーク様が背もたれに体を預ける。
あの旧城の地下にあった虹脈様は跡形もなく消えた。
虹色に輝くあの存在はなく、寂れ薄暗い地下の遺跡に成り果ててしまっていた。
それをリーク様は知っているのだろう。もしかしたらロイさんが報告したのかもしれない。
「……何が望みですか」
「私は交渉をしたいだけですよ。言ったでしょう? 虹脈様は私とシオンの中にある、と」
お母さんがそういうと、怪訝そうにリーク様は眉を顰める。ロイさんと目を合わせるが、肩を竦め合い分からないと言った表情で首を振った。
「私をどうか姚国に返していただきたい。そして、シオンをこの国に留まらせて頂けませんか」
「それは、どういう風の吹き回しで? あなたは今シオンの中にも虹脈があると言いましたね。ならば、この国に残る必要は無いのでは?」
「それはごもっともですよ。姚国に虹脈様全てが戻るのですから。でも考えてもみてください。このままだと、姚国もカロラも禍根を残したまま更に亀裂が入るだけだと思います。それを避けたいのは双方思っていることでは?」
リーク様の問いにお母さんはそう答える。
確かにこのまま姚国が去ってしまったら、今までと同じ。繰り返すだけだ。どこかで止めなければ、ならない。
「私からもお願いします。ここに、残らせてください。そして、私たちと新たな関係を築きたい」
私はそう頭を下げた。




