虹脈の鎮め方
鎮座している虹脈様の顔とも呼べる場所が、私たちに近づく。
まるで悲しんでいるかのように、頭を項垂れさせる。
言葉はないけれど、虹脈様がどう考えているのかなんてすぐに理解できた。
「帰りましょう、虹脈様。私と一緒に、姚国へ」
お母さんがそう言って、そっと手を差し伸べる。
虹脈様は動かず、その手を払い除けることもしなかった。
お母さんはそのまま、虹脈様の頭をそっと撫でる。
柔らかい虹色の光が、辺りを一瞬にして包み込む。
――――――――――――
「……おん! シオン!」
名を呼ばれてはっと意識が戻る。
そこは元いた地下の空間で、私はロイさんに抱き抱えられていた。
「私……! お父さん、お母さん!」
さっきの光景が思い浮かんできて、私は辺りを見回す。
所々崩れ落ちた形跡があるが、ぎりぎり耐えきったらしい。崩壊が免れただけ奇跡のように思えた。
「コウちゃん!? コウエイ!」
ふと壁際にもたれ掛かるコウちゃんとコウエイの姿が見えた。
コウちゃんは頭から血を流し、コウエイは腕を抑えていた。
「大丈夫だ、少し落ちてきた岩にぶつかったりしただけだ」
慌てる私にコウちゃんは頭を抑えながら答える。意識はハッキリしているらしい。
コウエイもそれにうなづいている。
「よかった、大丈夫ならいいんだけど……」
ほっと胸をなでおろしていると、シオンと声が聞こえた。あぁ、あの声だ。
ずっと、私を呼んでくれていた声。
直接聞きたかった。
「お母さん……!」
私はよろよろ立ち上がり声のする方へ走り出した。
そして、開かれたその胸に飛び込む。
「会いたかったわ。待たせて、ごめんね」
頭上からお母さんの声がする。
私は幼い子供に戻ったみたいに、その胸に顔を押し付ける。
「いい、こうして会えたから、いい……!」
そう答えると、お母さんはぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「お前、なのか……」
その声に私はお母さんを離さないまま顔を向ける。
そこには座り込んだままのお父さんがいた。
抱きしめ合う私たちを見つめ、驚いた表情だったがお母さんがそうよ、と答えるとすぐに立ち上がりわなわなと震え始めた。
「やっと、会えた……!!」
「待って、それは早計よ」
「……何?」
歩み寄ろうとするお父さんを、お母さんはその声だけで制すると私をそっと引き剥がした。




