とぐろをまく神様
虹色の光に一瞬で飲み込まれる。
眩い光の中で、私はただ虹脈様が思う帰りたいという気持ちに寄り添っていた。
だけど、その思いは強すぎて私の身には余る。それは怒りなのか悲しみなのか、諦められない心なのか。張り裂けそうな気持ちが私の全てを壊しそうだった。
受け止めきれない、けれど受け止めなければ虹脈様の暴走は止まらないだろう。
虹脈様と私の境目が段々曖昧になる。
きっと、私の中の虹脈様の一部が元に戻ろうとしているのだと思う。
私はきっと、私じゃなくなる。消えて、無くなる。
「お願い、止まって虹脈様……! 私がどうなってもいいから、もうこれ以上は……!」
壊さないで、この国を。大切な人がいる、この場所を!
「シオン……!!」
「……!!」
名を呼ばれて、私は振り返る。
曖昧だった境界線がはっきりと輪郭をとった。
掴まれたその手は温かく、力強かった。
「おかあ、さん」
黒く長い髪をなびかせて、優しく微笑むその人に私はやっと出逢えた。
「よく、ここまで頑張りました」
ぎゅ、と引き寄せられ抱きしめられたその腕の中は、安心出来る温もりがあった。
追い求めていた安心感に、私も腕を回して答える。
「シオン、まだ頑張れますか」
抱きしめあったまま、私はお母さんを見上げる。
「何をすればいいの?」
頑張る、という答えの代わりに私はうなづいて見せた。この状況を打破できるなら、何だってやる。
「お母さんとシオンで虹脈様を鎮ましょう。一人では出来ないことも、二人でなら出来るかもしれません」
分かった、と私は緩んだ腕の中から離れお母さんと手を繋いだ。
未だ荒れ狂う光の中で、虹脈様がのたうち回っていた。
「虹脈様、どうか私たちの声を聞き届けてください」
「姚国に帰るために、これ以上は暴れないで欲しいんです」
お母さんが口火を切り、私も続く。
「お願いです、一緒に姚国に帰りましょう!」
たった一つの願いだった。
お願いします、と強く祈る。神様の前では私たちなんてちっぽけなものだろう。声なんて届くはずもない。
けれど、届いて欲しいと思った。
届かせなければと思った。
「見て、シオン」
お母さんがなにかに気づき、私の名を呼ぶ。
目の前には虹脈様が私たちを中心にとぐろを巻いて、鎮座していた。
食われるとも思ったが、そうではないと直感する。
相変わらず眩い光の中だったが、虹脈様は暴れなかったから。




