姚国へ帰ろう
稲妻が走るように地面が割れ、虹色の光が目を刺す。
と同時に襲う、浮遊感。
下へ下へ落ちていく感覚に、目を細めながら開く。
底に広がっているのは、意志を持って蠢く虹脈の姿だった。
「お願い、暴れるのはやめて。お願い……!」
落ちる感覚のまま、神様に私は手を触れた。
温かいような冷たいような不思議な温度だった。ただそれは人や馬、犬や猫といった温度とは全く違う温度。
抱き締めれば温かくなる温度ではなく、触れればひやりと人の温度を奪うような体温だった。
あぁ、これが神様の温度か、と私は思った。
神様は何かを与えない。触れようとすれば何かバチが当たるような存在だと思わせられる。
きっと、虹脈もそうだったのだ。
与えているように見えて、私たちに本当の意味で与えてはくれない。
むしろ、与えるとか奪うとかそんなもの考えていない。ただそこに、ある装置のようなもの。
私たちがどうこうできるものじゃない。
気まぐれに、ただ神様の思いのままに。
私が生き返ったのも、お母さんが生き返らないのも、神様の意思。
「そうでしょう? 虹脈様」
声は、返ってこない。
私には、神様の声は聞こえない。神様の言葉が分からないのか、神様自体言葉を持たないのか皆目見当もつかない。
ただ、虹脈様がそうだ、とうなづいた気がした。
私の中の虹脈様の一部がそう告げている。
言葉がないとはいえ、神様にも意思はある。それが直接伝わってくる。
きっと、虹脈様の中にいるからだ。
今まで以上に、分かる。
「ねぇ、虹脈様。虹脈は、姚国に帰りたい?」
触れながら私はただ虹脈様が泣いている気がした。
泣きじゃくる子供のように、帰りたい帰りたい、と。
小さい子どもの姿を思い浮かべる私に、虹脈は答えるようにさらに大きな声を上げた。
私に縋る思いは、まるで母親にぶつけるように思えた。
「分かった、一緒に帰ろう。私が、姚国に連れて帰ってあげる」
だから、こっちにおいで。
私と一緒に帰ろう。
両手を広げ、虹脈様を受け止めるために私は目を開いた。
目の前に虹脈様がいる。龍のようにうねりながら私に絡みついて私とひとつになろうとしてきた。
大きな口を開け一思いに、私を飲み込む。




