こんなものがあったから
「シオンと同じように生き返ると思った。だけど、一向に生き返らなかった。だけど、待って待って待ったのに、この国に奪われるなんて思いもしなかった」
そう言って、お父さんは私たちに背を向けた。
全てを拒絶するように、お母さんしか見ていないとでも言うように。
「姚国は滅んだ。私にはもう、家族しかいない。スイ、お前が戻ってきてくれるなら、何だってする。だから、私にもう一度話しかけて欲しい。声が、聞きたい」
お父さんはそっと、壊れ物に触るように虹脈の結晶、そしてお母さんに触れる。虹脈の壁を通り越し、その頬に到達する。
あぁ、と感嘆の声を上げる。
「やっと、温かい頬に触れられる。そろそろ目を覚ましてくれ。頼むよ……」
お父さんの身体が虹脈に飲み込まれてゆく。
結晶の中を泳ぐように進み、お父さんはお母さんを抱きしめる。
その瞬間、結晶が強く脈打った。その振動は地下の空間を今まで以上に大きく揺るがす。
立っていられないほどの衝撃に、私達は膝を付いた。
「お父さん!!」
私は虹脈に飲み込まれた二人に手を伸ばす。
何が起こっているのか分からないけれど、このままではこの空間は崩壊する。
「シオン、止めるな。見ていろ」
ぱらぱらと壁が落ちてくる中で、コウちゃんは私の肩を掴む。
「どうして止めるの!? このままじゃ二人が、それにこの国だって!!」
今地上がどうなっているかくらい安易に想像がつく。
本当にこのままじゃ手遅れだ。
焦る私を知り目に、コウちゃんはいたって冷静、むしろ少しの期待を持った目で私を見ていた。
「この国なんて滅べばいい。姚国を滅ぼしたその罪を、今ここで贖ってもらうだけだ。そして、虹脈を取り戻す。シオンのお母さんが目覚めて、姚国が元通りになれば、シオンだって嬉しいだろう?」
「嬉しいわけ、ないでしょう!!」
私の叫びに、コウちゃんは困惑した表情を見せる。本当に、なんでか理解できないと言った表情だった。
私はそのコウちゃんにいらだちを覚える。
「どこが嬉しいの? それはこの国が姚国をめちゃくちゃにしたのは許せない。だけど、同じことして何になるの? 贖い? それは違う。いつか同じことをこの国からやり返されてまた滅びるだけよ。同じ轍を踏んではダメなのよ!」
そう、このままではダメだ。
全てが滅びに向かうだけ。お互い傷つけあって残るのは禍根と滅びだけ。
「お願い、もう、やめて!」




