あたらしいともだち
初めての出会いは、森の中コウちゃんと遊んでいるときだった。
鬱蒼とした緑の森の中、私はコウちゃんといつもの様に川で水遊びをしていた。
娯楽などほとんど無い姚国では、自然の中が1番の遊び場だった。
コウちゃんは私より少し年上で、いいお兄さん的な存在だ。
コウちゃんは私をいつも遊びに誘ってくれて、私は優しいコウちゃんが大好きだった。
いつもどこへ行くのも一緒。そう思っていた頃だった。
えい! と勢いよく、私はコウちゃんに水をかける。今よりも小さな手で懸命にすくった水をコウちゃんに向けて。
「うわぁっ!? あー! やったなぁ!!!」
ばしゃん、とキラキラ輝く水は容赦なくコウちゃんの顔面に当たる。ぽたぽたと全身から水を滴らせながら、コウちゃんは頬をふくらませた。
今思えば、コウちゃんは私に手加減をしてくれていた。だけど、その時は全然気づかずにコウちゃんに勝ったと思ったのだ。
それが楽しくて、嬉しくて仕方がなかった。
あはは、と笑いあっているとがさっ、と茂みが揺れる。
「シーちゃんこっち!」
危険を察知したらしい、コウちゃんは慌てて私の手を引くと背中に隠す。
「誰だ」
コウちゃんの低い声。警戒を最大限に滲ませて、コウちゃんは後退りを始めた。
なおも、茂みはガササガと音を立ててゆがて、1人の男の子が顔を出した。
コウちゃんと同い年くらいの男の子。お日様みたいな金色の髪に葉っぱや蜘蛛の巣をいっぱい付けた姚国の人間では無いその人。
「お前、誰?」
少し警戒を緩めたコウちゃんが問いかけると、その男の子は弾かれたように顔を上げた。
今にも泣きそうなくらい目に涙をいっぱい貯めて。
「ぼ、僕……ここどこか分かんなくて……」
うう、とコウちゃんの質問には全く答えず、自分が迷子だと告げると男の子は泣き出した。
「あぁ、おい!? 泣くな、そんくらいでぇ!!!」
涙と涎でぐちゃぐちゃになりながら泣き続ける男の子こに、コウちゃんと私は慌てて慰める。
背中に手を当ててさすったり、手ぬぐいで顔を拭きながらしばらくすると、鼻の頭を真っ赤にして泣き止んだ。
「はぁ……やっと泣き止んだ……。俺、コウリン。こっちは」
「シオンだよ。あなたは?」
だぁれ? と再び問いかける。
「ぼ、僕の名前は……ろ……いや、レイ」
「? ふーん、レイね。よろしく」
コウちゃんが手を差し出すと、レイくんは少し躊躇しながら手を握る。
それが、私とコウちゃん、ロイさんの出会いだった。