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雑草少女と花の国  作者: 山名真雪
雑草少女と新たな出会い
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10/120

森の中で2

背後に迫っている大男たちを惑わすためにジグザグに走る。すでに喉はひゅうひゅうと音を立て、乾く。

それでも必死に縺れる足を引きづって、道無き道を駆けた。


「あと少し……っ! うわぁっ!!!」


森をもう少しで抜ける、はずだったのに足がとうとう縺れ木の根に引っかかり地面の上を転がる。


「やっと、追いついたぜ、お嬢ちゃん?」


「観念して大人しくしな」


「いっ、や、離して!」


急いで起き上がろうと、力を振り絞るが追いついた大男達が私の腕を、髪を掴む。

ぎぎっと引っ張られ、私は身動きが取れない。

力の差は歴然。髪が引きちぎられる音がしても、逃げられない。

あまりの痛みで、涙が出る。これ以上引っ張られないように髪を押さえたけど、効果は無い。


「こっちへ来い、お前はいい売り物になる」


げへへ、と嫌な笑い声が頭に響く。

このままだと、どこかへ連れていかれる。確実に、闇の方向へ。


「嫌……それだけは……嫌っ……!」


がむしゃらに暴れても、男は私に馬乗りになって口を押さえた。

ギラつく目。何をしてくるか分からない、その形相に私は半狂乱になった。


「んー! んんんんッ!!!……っ、たす、けてっ!!!」


唯一動かせる首を必死に動かして、僅かに空いた手の隙間から叫ぶ。

誰か、誰か、と。


「ははは、無駄だよ。ここには誰も来やしない。ましてや、姚国の人間を助ける、者なんて、……ぐあっ!」


「………!?」


涙で霞んだ視界の向こうに、白い何かが横切った。

それは草むらを無尽蔵にかき分けて男の頭上に落ち、あっという間に男を昏倒させる。


「……っ、ハンナ!?」


あっさり男は地面に転がり、目を回していた。

その男に襲いかかったのは、ハンナだった。

ぶるると鼻息荒く鳴き、見開かれた目はとても怒っているように見えた。


「こんの、野郎……ぐへッ……………!」


「あぶな、……い……」


不意を付いて背後からもう一人の男が飛び出してきたが、ハンナの後ろ足が直撃しもう一人も昏倒した。

どさっと、無力なまま崩れ落ちた男たち。

この状況にどうすればいいのか分からなかったが、ハンナが私の顔に自身の顔を押し付けた。

自信に満ちた顔。何かを訴える瞳が、僅かにハンナの背中を見た。


「……まさか、乗れっていうの?」


ヒヒン、と肯定。

いやそれは、と言おうとした時、茂みの向こうから足音が近ずいて来る。

まずい、追っ手かもしれない。迷っている暇はなかった。


「ごめん、ハンナ、お願い!」


鞍も馬銜も何も無い。純粋な馬の背に乗る。

鬣を掴み、私は力いっぱい地面を蹴って飛び乗った。

それを支えるようにハンナも少しかがむ姿勢を撮ってくれたおかげで、難なくその背に乗ることが出来た。

馬と一体化するように姿勢を低くすると、ハンナは勢いよく走り出した。


茨の舗装されていない獣道を、何も障害は無いと言いたげに駆けていく。

年老いた馬とはまるで思わせない走りに、ついて行くのがやっとだった。

振り落とされないように掴まって、行き先はほぼハンナ任せだ。

けれど、不思議と怖くはなかった。


やがて、森を抜けてハンナは足を緩めた。

そして、私もゆっくりと目を開けて、体を起こす。

辺りを見回すと、どうやら隣村へとたどり着いた。

もう少しで夕暮れになる時刻。空は茜色に染まり、刻一刻と暗くなっていく。

今日はここで一泊しよう。そう決めて、旅人用の馬を留めておける宿に決めた。

足元を掬われないように、金額に気をつけていくつかの宿を周りベッドに入り込む頃にはすっかり暗くなっていた。


目を閉じると直ぐに、眠気が襲ってくる。

今日一日で色々あった。感じている以上に、私は疲れているらしかった。

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