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プロローグ
「チカラが欲しいか?」
真っ暗闇の中、誰とも知らぬその声は低く鳴り響いた。
しかし、何も見えない中で発せられたその声の主が誰か…なんてものはどうでもいい。
そんなことよりも、その言葉が心の底から魅惑的に思えて仕方なかった。
「何者にも負けないチカラが欲しいか?」
再度語り掛けてきた声は、こちらの心情さえ見透かして、催促しているようにも思えた。
だが、答えようにも身体はろくに動かず、声すら上手く出せるか分からない。
それでも、俺は最後のチャンスを掴むために、魂の雄叫びを上げる。
「…欲しい。誰にも負けない、絶対的なチカラが、欲しい!」
悔しさに打ち震えながら出た声は、聞き馴染みのある自分の声とは似て非なるもので、、我ながら驚いてしまうほどだったが、想いの強さは聞き届けられたようだ。
「……いいだろう。ならば、これで契約成立だ」
不敵に笑う相手は、満足気にそう言って話を終わらせた。
意識も朦朧としている中、チクリと痛みを感じたのを最後に、俺はまた深い闇へ落ちていった。