第39話 人質
その音の手には刃物。
平頭は激怒した。
平頭『お前はあの時の!! 一体、何が目的でこんな事をしてるんだ!!』
男は笑いながら言う。
男『お前は試合に負けた。 そして、家族も仲間も守れない哀れだねぇ!! あのまま死んでた方が楽だったかもよ?』
平頭は男に殴り掛かろうとするが
男『おい!? 家族が殺されてもいいのか? 次に一歩でも動いたら娘から殺すぞ!?』
平頭は拳を握り締め堪える。
平頭『お前らは一体何が目的で仲間を殺した!?』
男はモニターを見ながら言う。
男『簡単な事さ...不死原が遊びたいって言うから遊ばせただけさ!! それが近くにちょうどいたお前らだった...運が悪かったんだな!!』
その言葉に平頭の怒りは爆発した。
平頭『人の命を何だと思ってるんだお前らはぁああ!! ただ、殺したいだけで殺していいなんてそんな理由が納得できるかぁああ!!』
男『声を荒げるな!! 耳障りだ!! 家族が死んでもいいのか!?』
妻は恐怖に震え声も出せず、娘は泣き叫んでいる。
平頭は今の自分であれば地面を利用して防げると思ったが男には既に見透かされていた。
男『お前の決闘因子は俺には効かない!! 既にこの部屋はそれを把握して細工している!! 無意味だ!!』
平頭は歯を食い縛り、ただ立っているだけしか出来ない。
男『負けた雑魚はもう死ぬしか運命はないんだよ!! このまま家族仲良くあの世でもう一度逢えば幸せになれるぞ!!』
そう言うと男は娘に目掛け刃物を振り下ろした。
ガキィイン!!
金属が重なる音が部屋に響いた。
『やはり、平頭殿は無実でござったか...』
平頭が目を向けるとそこには男の刃物を間一髪で受け止めている東谷がいた。
東谷『部屋が横だったので全て聴かせて貰ったでござる!! この悪人は成敗せねばな!!』
そう言うと刃物を弾き、男に電磁刀を向けた。
男は笑いながら東谷を見る。
男『おい!! 今だ殺れ!!』
ドンッ!!
東谷は背後から何者かに凶器で殴打され倒れた。
平頭『このクソ外道共がぁああ!!』
平頭が東谷に向かおうとするが
東谷『平頭殿!! 守る者が他にいるであろう!! 我の事より愛する者を守るでござる!!』
平頭『けど...お前』
東谷『早く行けぇえ!! 平頭殿以外に誰がその者達を守れる!! もう誰も死ぬのを見たくないでござろう!?』
平頭は妻と娘を守りながら壁をぶち破る。
平頭『必ず助けに戻る!! それまで死ぬな東谷!!』
東谷は笑った。
東谷『初めて名前を呼んでくれたでござるな...』
そう言うと朦朧とする意識の中、平頭達の逃げる背中を見ながらゆっくりと目を閉じた。




