第3話 暗闇で嘲笑う何か
真っ暗で静寂な中を下原は歩いていた。
自分が何故ここにいるのかも分からない。
出口があるのかも分からない。
自分は借金取りから逃げてから公園で倒れたところまでの記憶はあるがそれ以上この事を思い出そうとすると何かが邪魔をする。
自分は死んだのか?
それとも生きているのか?
何か大切な物を失った不思議な気持ちだった。
理解が全く出来ず頭が混乱する。
歩いても歩いても何も変わらない風景。
折れていたはずの足が折れていない。
自分が何故この場所にいるのか。
だけど感じる何かは分かる。
自分が暗闇を進む度に何かを失っている実感と元の生活には戻れない絶望だけが...
何時間歩いただろうか?
分からないぐらい歩いた。
疲れは感じない。
ふと耳を傾けると僅かに聴こえた。
俺の名前を呼ぶ声
俺はその方向に向かい精一杯走った。
僅かに聴こえた声は俺を嘲笑うかのように笑っている。
下原『誰かいるんだろ? ここが何処か教えて欲しい!』
しかし嘲笑うだけで何も教えてくれない。
下原『クソッタレが!!』
嘲笑う声に罵倒を浴びせながら走り続けた。
『キミ生きたい?』
嘲笑う声から急に問いかけられた下原は胸がドキッと音を立て走る足を止めた。
しばらく沈黙が続く...
下原は考えた。
生きていても借金から逃げる毎日。
蔑まされ暮らす毎日。
下原『...このまま死んだ方が楽なのかな?』
悩みに悩んだ
『人間として生きなければいいんだよ!!』
突然の謎の答えに戸惑う下原
これはどういう事だ?
結局俺は死んでるのか?
下原『...どうすればいい?』
声に答えた。
『実験体として生きればいい。 でも、楽ではないけどね。』
下原『実験体...?』
聞きなれない言葉に困惑する。
『実験体として生きればキミの願いを聞いてあげてもいいかな!』
下原『その言葉本当だな?』
その言葉にまた下原を嘲笑った
『本当だとも!!君が成果を残したらだけどね。』
下原も実験体として生きる覚悟は人間を捨てる事だとは直ぐに把握したが願いを叶えるという条件を飲んだ。
下原『...分かった! 従う! だからここから出してくれ!!』
すると暗闇を切り裂くように眩し光が一点少し先に出来た。
下原はその光に向かって走り出す。
何もかも捨てる覚悟で...
『ようこそ!実験体戦へ...』




