第38話 選択
無実を訴えたがそれも虚しく金庫部屋に放り込まれる。
世間では前代未聞の大量虐殺事件の報道で持ち切りだ。
平頭には妻と娘がいる。
何よりも大切な家族がこの事件で被害を受けていないか心配と不安で押し殺されそうだ。
だが、ここでいる間は何も情報が掴めない。
ただ、大人しくしているしかないのだった。
刑務所内でも大量虐殺で捕らえられている平頭の話題で囚人達が騒いでいる。
それは平頭も直ぐにその事は察していた。
自分は被害者だが周りでは自分が加害者という理不尽なこの地獄は平頭を徐々に苦しめる。
そんな拷問を耐えながら迎えた判決の日
判決は"死刑"
その一言が平頭の心に重くのし掛かった。
自分は何もしてないのに死刑。
仲間を目の前で殺されたのをただ、見ているしか出来なかった罰とでも神は言っているのか?
あの日に戻れるのであれば違う行動が出来たのだろうか?
平頭は無言のまま考える。
ただ、死を待つだけ家族にも逢えずに...
そんな時だ面会したいと言う人物が平頭の元に現れた。
それは妻や娘ではなく、見た事もない男だった。
その男は平頭の姿を見るなり笑った。
そして、監視に聞こえないように耳元で囁く様に言った。
『ここから出たいか?』
平頭は訳が分からずその男を凝視する。
男は更に問う。
『ある実験に参加してくれるのであればお前の命は保証する。だが断ったらお前の大切な物も全て失くなると思え!!』
平頭はその言葉で家族に危機が迫っている事が直ぐに分かり、男に怒鳴る様に言った。
平頭『キサマぁ!! 俺だけじゃなく家族にまで手を出すと絶対に殺す!!』
その怒鳴り声で監視が部屋に入り、平頭を取り押さえる。
男は笑いながら一言告げた。
『明日までに答えを出しな。 これが最後の忠告だ。』
そう言うと男は部屋から出て行った。
平頭はこれが全て仕組まれた事であり、その条件の為にこの様な逃げ場のない状況を作り出したのだと感じた。
自分に選択権は1つしかない家族を守る為に、その実験を申し出のだった。
全てを思い出した平頭は血管が裂ける勢いで拘束具を千切った。
そして、部屋を出ようと振り返った時だ
ガチャと控え室のドアの空く音がなり
目の前には妻と娘を人質に捕った男が笑って立っていた。




