第37話 惨劇の日
実験体として失った記憶が再び戻る事はない。
今まではそう思われていた。
しかし余りの憎悪で平頭の忌まわしき記憶が今、全てを甦らせた。
遡ること2年前
平頭がまだ人間であった頃、
格闘家団体に所属していた平頭はその団体のリーダー的な存在の強く優しい男であった。
その日は強化合宿でとある町に団体全員で参加していた。
片山『平頭さん、今日も張り切ってますね!!』
片山は昨年、この格闘家団体に入団したルーキーである。
平頭の試合を見て憧れを抱いている。
平頭『お前は口じゃなく、体も動かせ!! そんなんじゃ強くなれんぞ!!』
そんな他愛ない会話をしながら、いつもの感じで練習をしていた時だ少年がその場に現れたのだ。
その少年こそが不死原であった。
初めは、地元の少年が合宿場を見に来たのかと誰もが思っていた。
そして、ある1人が不死原に話しかけ練習の見学か聞こうとした時だった。
一瞬で体を醜いまでに変形させられ殺された。
そこにいた誰もがその状況を理解出来ない。
それからは、次々に不死原によって殺されて行く格闘家達。
平頭もその場にいたが何も出来なかった。
ただ、死んでいく仲間を見る事しか
笑いながら殺戮を楽しむ不死原は人間ではない怪物だとその時察した。
平頭『片山!! お前だけでも逃げろ!! あれは化物だ勝ち目はないぞ!!』
平頭は将来のある片山を逃がそうとしたが片山は腰が抜けて動けない。
片山『あぁ...平頭さん...腰が抜けて動けないです!!』
そんな片山を見て、ニヤニヤしながら不死原が近付く。
不死原『弱すぎて遊び足らないよぉ!! そこの腰抜けを見るとイライラするんだよねぇ...ぐちゃぐちゃにしてあげる!!』
そう言うと不死原は自身の肉体を変形させて、片山に手を掛け様とする。
片山は自分の死を察した。
目を閉じたその時、グシャっと鈍い音がした。
うっすらと目を空けると其処には、片腕が千切られながらも必死に片山を守る平頭の姿があった。
片山は呆然とし失禁している。
不死原『何カッコ付けてんの? 片腕失くなって可愛そうに!!』
そう言うと不死原は片山の方を向いて凄まじい蹴りを繰り出した。
平頭が庇うも虚しく、片山の頭部は壁に張り付くように重たく痛い音が平頭の耳に残った。
平頭『キサマぁあ!!』
平頭は不死原に殴り掛かるが、一瞬で避けられる。
不死原『哀れだねぇ...仲間を殺されて自分は片腕が失くなって!! このまま君を殺したらつまらないからなぁ...』
そう言うと不死原は飽きた様にその場を後にした。
平頭はその場に崩れ落ちる。
仲間を全員助けられなかった無念と憎しみだけを残して言葉がでずに呆然と
そこに被害を聞き付けた警察が駆け付けたが、有無を言わずに平頭を取り押さえた。
平頭も抵抗するが警察は聞く耳を持たない。
平頭が事実を説明しても誰もが何故かそれを信じない。
まるで警察にまで手を回している陰謀かの様に
平頭はこうして無実の容疑を全てを背負い大量殺人犯の容疑者となってしまうのだった。




