第2話 缶コーヒーと俺
下原は朦朧となる意識の中、足音の人物を見上げた。
視界が霞んでよく分からない。
下原『誰だ...アンタ...?』
喋る体力もほとんど無く声を搾るり出し問いかけた。
すると少し間が空き
謎の人物『...キミの知ってる人かな?』
そう言うとその人物は下原の横にそっと缶コーヒーを置きその場から去って行った。
微かに見えた後ろ姿は確かにどこか見覚えのある姿をしていたが思い出そうとすると頭が割れそうな感覚になる。
...。
『ドサッ!』
下原は体力の限界でアスレチックから滑る様に倒れこんだ。
出血が酷く赤い水溜まりが出来ていた。
冷たい缶コーヒーが下原の頬に触れる。
下原『...最後の晩餐が缶コーヒーかよ...笑えねぇ...。』
力を振り絞り缶コーヒーを掴み蓋を空けようとする。
しかし下原には蓋を僅かにしか空ける力しか残っておらず、少し空いた蓋の隙間から数敵のコーヒーの滴を舌の上に感じた。
いつも飲むブラックコーヒーより苦く感じた。
『俺は後どれぐらいで死ぬのだろうか?』
『俺の人生は結局何がしたかったのか?』
『俺は生きた証を残せたのだろうか?』
しょうもない人生だった事は間違いない。
でもこうなるまでは少しでも幸せって感じた時だって俺にもあった。
人として生まれた事に後悔はしていない。
なんて普段考えた事のない想いが頭に溢れる。
下原『...俺がこのまま死んだら明日のニュースで報道されるのかな?そうしたら親父やオカンはどんな感じなんかな?』
もう数年も見ていない親の顔が浮かぶと何故か涙が溢れる。
生暖かい涙が地面に落ちる。
下原『ゴメンよ...ゴメンよ...』
力無い声で繰り返した。
徐々に声も小さくなり意識も無くなってきた。
眠たい感覚に似たような何か変な感覚。
地面に横たわった体はそのまま動かなくなった。
するとまた足音が下原に近付いてくる。
そして横たわる下原の横にかが見込む。
謎の人物『...キミはまだ死なせないよ。』
そう言うと謎の人物は下原を肩に担ぎ上げて公園の外に向かって歩き出す。
公園の入り口に停めていた黒いワンボックスカーの後部座席のドアを開けるとそこに下原をそっと寝かせた。
軽く微笑みながらドアを閉めた。
謎の人物『さぁ、行こうか...。』
夜の静寂な公園に車のエンジン音だけが響いていた。
そのまま音を残した様に車は公園を後にするのだった。




