第1話 日常が壊れた日
この日ある男の日常が壊れた。
男の名は下原、2年前までは一般的な家庭を持ち何気ない毎日を過ごしていた。
しかし、会社のストレスからか毎日のようにギャンブルに明け暮れ『多額の借金』、『離婚』、『解雇』と手のつけられないギャンブル依存性となっていった。
消費者金融で借りてはギャンブルに注ぎ込み、挙句の果てには闇金で借りるまでに至った。
その借金の総額はおよそ"1,000万円"まで膨れ上がり下原だけで返済出来ない額に達してしまった。
そんなある日の夜、いつもの様に住んでいるボロアパートのドアの前には借金取りが取り立てに来た。
借金取り『オラァ!! 居るの分かっとんやぞ出てこんかワレェ!!』
借金取りは下原の部屋のドアを怒号を浴びせながら蹴り続ける。
下原はいつもの様に部屋の押し入れに息を殺し隠れ居留守を使った。
しかし、この日は借金取りが帰る気配がないのだ。
次の瞬間
『ドォォオン!!』とドアが蹴り倒され借金取りが部屋の中に入ってきたのだ。
借金取り『居るんわかっとんやぞ!! 3つ数える内に出てこなどないなっても知らんぞワレ!!』
下原はまさかの展開にブルブルと体が震え、殺していた息も緊張で荒くなる。
冷や汗で水溜まりが出来そうだった。
心臓の音が耳で分かるほど大きく感じられ、相手にも聴こえているのではないかと錯覚を起こしていた。
借金取り『この中やな!!』
下原は借金取りが押し入れに手を掛けたのが分かった。
恐怖、後悔、そして死が頭の中を駆け巡る。
下原は自分の過ちを後悔したが時既に遅く、押し入れが少し空き月の光がうっすらと押し入れの中に入ってきた。
そして押し入れが勢いよく開いた。
その瞬間、下原は借金取りの腕の下を掻い潜りそのまま2階の自分の部屋の窓から外へ向かって飛んだ。
地面に着地した時、骨が折れる生々しい音と激痛が襲ったがそれを確認する余裕など今の下原には無かった。
借金取りの怒号が背後から僅かに聴こえながらどこか隠れる場所を探しただ、ひたすら走るしか生きる希望がない。
何時間経っただろうか、どこか見知らぬ公園で下原は倒れた。
折れた骨は皮膚を突き破り、血が止まらない。
朦朧とする意識の中、公園のアスレチックにもたれ掛かりポケットから煙草を取り一本口に加え火を付けた。
空に舞う煙草の煙を見つめて呟いた。
下原『駄目だ...このままじゃもう...足も使い物にならねぇ...』
その時、誰か近付いてくる足音が聴こえた。
しかし、下原には逃げる体力も無い。
足音は既に横まで来ていた。




