第13話 悪魔
樋尻の顔と体は無数のツギハギだらけで口元にしていたマスクは破れ牙を剥き出しにして息を荒げている。
目は赤く染まりまるで悪魔の様な死体人形であり面影は一切なかった。
樋尻『グゥオォォオッ!!』
鼓膜が破れるような唸り声がコロシアムに響いた。
停止していた観客の術は解けて、皆悪魔の様な姿となった樋尻を見て悲鳴を上げる者、逃げ惑う者もいた。
下原『くっ...樋尻...救えなかった...』
下原は助けられなかった後悔と今、目の前に現れた悪魔を見て体を動かす事が出来なかった。
山畑『...どうしたことでしょうか!! 今までの記憶が一切ありませんが下原選手と悪魔の様な生物が向き合って立っています!! 樋尻選手は何処に行ったのでしょうか!?』
山畑や観客が樋尻が目の前の化物になったと言う事は誰一人として術のせいで知るはずもない。
樋尻は両手を下原に向けて構えた。
樋尻『オマエヲ...コロス!! -闇の解放-!!』
樋尻の両手から漆黒の波動が下原目掛け放たれた。
下原は間一髪のとこで右側に転がるように避けた。
波動が当たった床は黒煙を上げながらエグれている。
下原は冷や汗をかきながらエグれた床を見た。
下原『...マジかよ...こんなの当たったら跡形もねぇ...』
下原はハッと慌てるように振り返った。
そこには樋尻が凄い形相で下原目掛け殴りかかっていた。
下原も直ぐに腕で守ったが余りの威力に撥ね飛ばされる。
腕は軋むような鈍い音を鳴らした。
それは左腕が折れた音だった。
それと同時に床に打ち付けた体が悲鳴を上げる。
下原『ごっはぁ...』
激痛で床をのたうち回る。
だが樋尻はのたうち回る下原の髪を掴み顔面目掛け拳を振り切った。
下原は白目を剥き後方に転がった。
意識が吹き飛ぶ感覚で地面にうつ伏せに倒れた。
樋尻『モウオワリカ...?』
樋尻は挑発する様に下原に向かい言った。
下原は産まれた小鹿の様にギリギリ立ち上がった。
下原『...ゲホッゲホッ...ヤベェ...死ぬ...』
目の前に現れた化物に何も出来ずに弄ばれる。
下原は右腕を震わせながら樋尻目掛け精一杯の力を込めて銀玉を撃ち込んだ。
下原『...うっ...銀玉射撃...』
銀玉は樋尻の頬をかすめただけで樋尻はびくともしていない。
『絶望的』この言葉が今の下原の心境である。
立っているのがやっとのこの状況、目の前の悪魔は下原に狙いを定める。




