もうこの手から零さない

辻 優一は異世界へ転生する。
そして、ユレンとして第二の人生を歩みはじめた。

彼は運命と引かれあう。
村人としての平穏な日常は突如、終わりを告げる。
ユレンは国と国、人と人がぶつかりあう戦争の世界へ身を投じることとなる。

無慈悲な力に屈服し、人を憎んだ。
残酷で、救いもなく、無慈悲に襲いかかる魔物の群れ。
汚く光り、毒々しく、粘性の持った人間社会。
ユレンの体と心は次第に摩耗していった。

平等に降り掛かる死。殺し、殺されかける日々。
磨り減る精神、虚勢で固めただけの心。
休み癒しても、酒で流しても、煙草の煙と共に吐き捨てても、消えることのない深い傷。
平穏さえ、彼が留まることを許さない。

世界が欲しかった。自分だけの、世界。
力が欲しかった。全てを守れる力。
友が、家族が欲しかった。死なないための理由。
彼を笑うは人か、世界か、運命か。

巻き起こる動乱。希望か絶望か、幸か不幸か。
全ては彼を逃さない、離さない、殺さない。

そしてユレンの才能は望まぬとも目覚める。
彼が望むは、ただひとつ。

彼はこの世界を"生きる"。






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