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英雄として転生したこの世界で、俺は特に何もしない。

初投稿です。

不定期で続編を上げていきまたいと思います。

意見等いただけたら幸いです。


 01. 死んだんだよ



「は?さむっ。」


呼吸をする度に、冷たい空気が鼻に、喉に流れ込んでくる。

一面真っ白で、目を閉じていても眠れそうにないくらい明るい、間取りの掴めない程広い空間。そんな居心地の悪い場所で俺は目を覚ました。

そして同時に、自分が今まで眠っていたのだと気づく。


「どこ?」

第一声はそれだった。いや、その前になにか言った気がするが、俺の脳はそんなことを覚えていない。

とりあえず自分が寝入った時のことを思い出そうとする……が、思い出せない。

いったい何が起きた? 訳が分からなすぎる。19年間の人生で前例のない緊急事態だ。目が覚めたら変なとこにいる。

かなり驚きが生じているが、混乱はしていないみたいだ、落ち着いている。これが夢ではないと、俺の頭はしっかり理解している。現実離れしたこの空間を現実だということを理解してくれている。

どんな時でも自分を見失わない精神力と判断力、これは俺の誇れるところだ、偉い。


いや、それよりも……寒い。まって、寒すぎ、体の震えが止まらないんですけど。

これあれだ、寝相が悪すぎて掛けていた布団を放り出して迎えてしまった、冬の朝のそれだ。喉と鼻と目の違和感から体調を崩してしまったと、寝ぼけながらも分かってしまう残念なやつだ……まじで布団欲しい。

動きたくない、寒い、だるい、そして眠い。

ということで、俺はもう一度目を閉じた。

しかし、寒さと、明るさと、謎の緊張感から眠りにつくことは出来なかった。なので、目を閉じながら少しだけ頭を回す。

よし、とりあえず今は現状を整理しよう。


まず、何かが起きた。

そして、俺は倒れていた(眠っていた)

たった今、よくわからんとこで目覚めた。


……うんバッチリだ、最低限の出力で、最低限の仕事をしてくれた俺の脳に、最低限の感謝を。

……そう言えば、たしか俺はさっきまで、誰かと遊んでた気がする? んで、えーと、その後どうしたんだっけ?


「トラックに撥ねられたんだよ」


後ろからレスポンスが返ってきた。びっくりしたぁ……けど落ち着いている。はい、さすが俺ぇ。振り返ろうとしたけどめんどくさいな……無視で。


「おい、せめて目を開けろ」


え、やだよ。てかこんな寒いとこに、人が倒れてるんだぞ?

普通ここは、大丈夫ですか? とか、凍死体落ちてんだけど? とか、そういう台詞があって然るべきだろ。なんだトラックに撥ねられたって。馬鹿かこいつ。


「馬鹿はお前だ馬野郎、耳元で念仏唱えるぞ」


やめろ、俺は馬じゃない。けど、念仏を聞いても結局意味は分からないから馬みたいなもんか。

仕方ない開けてやるバフン。どうやら俺の心の声は全てコイツに伝わっているみたいだバフン。


「いや、心の声ガン漏れしてますけど。あと、馬の鳴き声はバフンじゃねえよ」


うん、どっちも知ってる。

そして俺は目を開ける。すると、そこには若干男前の、背は少し高めの、髪型はセットされた清潔感溢れる短髪の、ニヤついた表情の、見知った顔の、そして全裸の変態がいた。


…………なので再び目を閉じた。


「おすすすぅりあ。」


訳が分からないだろ? これ挨拶なんだぜ?

こんな状況でも取り乱したりせず、いつも通りのきもい挨拶。頼りがいのある変態と見える、けど実際はそうではない、コイツはただの馬鹿だ。長い付き合いなので、なんとなくだが察しがつく、おそらくコイツはこの状況をまだ夢かなんかだと勘違いしている。

これは夢だからいっぱい遊ぶぞーとか思ってる。馬鹿なやつ。

とりあえずテキトーに返事をしとく。


「よお、久しぶりだなビタちゃん」


「おいまて、俺の名前は進歩だ。三津谷進歩みつや すすむさんだ。あと、その名で弄るなといつも言ってるよなあ? ぶち殺すぞ」


こわ、てか聞き覚えのある名前が出てきた、俺の大親友の三津谷進歩の名前が。


「変態にぶち殺される覚えはない。それと、先程から僕のことをまるで、あなたの知り合いであるかのように話されていますが、僕はあなたのことを知りません。人違いじゃないですか?


「いや、俺のことを、俺の元カノのあだ名で間違えた時点で、貴様は俺の知っている大親友、明理宗介あかり そうすけ君で間違いない。てゆーか、おすすすぅりあって言えよ」


「バカ言うな、俺に変態の親友なんていない。いや、要らない。たった今から愛と勇気だけが俺が唯一心を預けられる友となった」


あと、そんなきもい挨拶はしたくないです。


「出会い頭に親友のことを変態だなんて、そんな悲しいこと言うなよ。そして愛と勇気なんてやつはこの世に存在しない。俺はそれをビタちゃんに教えて貰ったんだ」


そうだな、ビタちゃんはお前に、愛と勇気だけじゃどうにもならないことがあると、現実を見なければならないと教えてくれたな。

ちなみに、こいつの元カノの本名は空野晴恵そらのはるえちゃんだ、たしか。バレンタインデーでこいつがビターの板チョコを貰ったことから、そんなあだ名がついたらしい、クソみたいなセンスだ。今思えばビターって……そんな冷たい贈り物があるか?


「はぁ……そこの全裸の変態に問う。俺の知ってる親友はどこへ行った?もしかして、もうこの世界にはいないのか?どこか遠くへ行ってしまったのか?ならばそれこそ念仏を唱えてあげるべきだろう?悲しさで声が振るえないよう気をつけなくちゃな。ちなみに俺は、そこの変態を受け入れることは出来ないのであなたも一緒に成仏しておきませんか?」


「ふっ、悲しい時は声を振るわせて泣けばいいのさ。まあ、人生ってそんなもんだ。別れは突然やってくる。受け止めろ。そしてお前はこれから、この変態と親友になるんだ、受け入れろっ!」


両手を広げたと思う、なんとなく、空気感で分かった。だが、当然目は瞑ったままなので真相は分からない。もちろん、答え合わせもしない。

あと、ついこないだ高校を卒業した19歳のガキが人生を語るんじゃない。お前はまだそこまで教わってないだろ。予習、復習をしっかり行って、1段ずつ階段を登っていくのが人生だ、近道はないし、飛び級もない。つまり、貴様は早く小学校に行って、服の着方を教わってこい。

てか、変態って自覚してるんかい。


そして、三津谷進歩は高まったテンションを切り替えるように、コホンっと、咳払いを1回した後、トーンを少し下げ、こう続けた。


「まあけど、成仏はするかもな」


……?


「どういうことだ?」


変態からいきなり出た、もしかしてコイツはこの現状に対してある程度の理解を持ち合わせているのでは? と思わせられるそんなセリフに、柄にもなく真剣な声色で聞き返してしまった。


「ん?さっき言ったろ、トラックに轢かれたんだよ俺ら。つまり、死んでるんだ」


…………ん?

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