小話6(小話5と同場面)
学園の、放課後の時間の流れが好きだと思う。のんびりとした、落ち着いた時間。多くの人は暑いからか、すぐに帰宅したようで、この場所には今、スケッチをする自分だけ。中庭は木々が日陰を作って、幾らか涼しく見える。まぁ、気温は高いので、実際はかなり暑いのだけれど。
友人の想い人は不思議ちゃん。ぱっと見た感じ、気品に満ち満ちた感じの完璧な貴族令嬢なのだけれど。
暑いからか誰もいないなぁーと思いながら、のんびりスケッチブックに風景画を描いていた。ジジジジジ……という蝉の鳴き声に混じって、カサカサした音が聞こえた。人の気配がして、見たら、友人の想い人がいた。友人とその想い人は許嫁の間柄。でも、気持ちの面では友人の片想いのようだった。
「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
どうしたのかなぁと心配になる。誰かに恋でもしたんだろうか? 恋を占っているのか、それとも、呪い……?
カサカサした音を立てながら、占いは続く。
「……好っ」
こちらから見ていても分かるくらい、不思議ちゃんの耳が真っ赤になった。
友人もそろそろ来る頃だと思い、林檎みたいに顔を真っ赤にした不思議ちゃんに話しかけた。スケッチブックを見せたら、話しかけたときよりもっと真っ赤になった。
その後すぐ友人が来て、変に疑われても困るなぁと思ったから、スケッチブックを見せた。
友人も真っ赤になって、それからしばらくお喋りした。友人と不思議ちゃんが不思議な会話をしている様子が可愛くて、またスケッチして。
会話に疲れたのか、友人はちゃっかり不思議ちゃんの手をとって行ってしまった。
「……あ。ノート」
明日返せばいいかな。
あ、でも明日は休校日……。