小話12(小話8の後)
出来るだけ多くの者と接するようにしている。
特に昼食時はこちらから声をかけ、色々なグループに混じるようにしている。過ごすのが毎日同じ顔触れであってはならない。偏りは不満を招く。また、将来的に王宮勤務する可能性がある者達の人となりを知ることが出来る、という考えもある。適度に、共にいる者を入れ替える。
それでも、長年にわたる学園生活。とりわけ親しい、気を許せる友というのは出来るものだ。特に親しい友人は二人。そのうちの一人は幼い頃から付き合いのある、許嫁殿の双子の兄だった。
その日、昼休憩は特に親しい二人の友人と過ごしたのだが……。
午後の授業はきっと集中できないと思った。
昼休憩の終わり頃、友人殿は爆弾を仕掛けて行った。
許嫁殿と話をせねばと思う。
しかし、何といえばよいのやら。既に気持ちが通じたものだと思っていた。自分の彼女への想いが伝わって、彼女は受け入れてくれたのだと理解していた。だが、友の話からすれば、おそらく伝わっていない。ただの色欲魔に思われた節がある。こちらの名誉にかけても早々に修正を入れねばならない。
今までに三度、婚約破棄の話はしたが、いずれもすぐに撤回した。三度とも自分が仕掛けたのだが、三度目は少々危なかった。
それ故、こちらから婚約破棄を言い出すつもりはもう無い。されど、彼女が婚約破棄を強く望み、言い出したならどうなることか。もともと彼女は婚約を望んではいないのだ。婚約破棄云々という事態は避けねばならない。
故に、許嫁殿と早急に話さねばならない。
放課後、彼女に声をかけた。
「許嫁殿、少々話があるのだか」
普段、学園内ではあまり会話はしない。皇后に付いて彼女の屋敷へ行くときに喋るくらいだ。
私達に気付いた者達がこちらの様子を気にして見ている。
「今から委員会がありますの。お急ぎでしょうか?」
「委員会は何時に終わる?」
「学園祭の関係ですので、長引くかと」
「……帰りは遅くなるということか? 送ろうか?」
「兄も委員会に参加しますので、帰りは兄が一緒ですの。なので、大丈夫ですわ。ご用件、すぐに済むお話でしたら、今お伺いしますけれど」
「いや、いい。日を改める」
完璧で美しい許嫁殿。
慎重に言葉を選んだのだろう。
お陰で、会話は用件のみ寄り道なしの最短コースで済んでしまった。
二人きりで、人が見ぬ場所で喋りたいと思う。
彼女に触れ、言葉で気持ちを伝え、この両腕で彼女を抱きすくめ、彼女の唇に触れたい。接吻したい。
結局、次の日は声をかけず、また次の日も声をかけず、また次の日も声をかけず、また次の日も声をかけず、休校日を二日挟み、また次の日も……。
友B「ねぇ。あれからちゃんと、愛し君ちゃんと話したの?」
殿下「タイミングが合わなくてな」
友A「結局チキンはチキンのままだな。文明はどこへやら」
友B「幾ら友人が臆病でうじうじ、じとじとしたダメダメな子でも、言っていいことと悪いことがあるんだよ?」
殿下「二人して、私を貶しておいでかな?」
友A「いやいや、俺はこいつ程言ってねぇーし。お前、さも心配です……っつー顔して酷ぇーから。表情と、言ってることとの差! 普段大人しいやつほど怖ぇーってな」
友B「愛だよ、愛」
殿下「友の愛が重いな。私も怖いんだがなぁ、友人殿」
月が替わった。
彼女とは何も話せぬまま。
友B「ねぇー。誕生日、何かあげる?」
友A「んー、どーすっかなぁー」




